キューブ空間
適用対象: SQL Server Analysis Services Azure Analysis Services Fabric/Power BI Premium
キューブ空間は、そのキューブのメジャーを伴った、キューブの属性階層のメンバーから構成されます。 したがって、キューブ空間はキューブ内のすべての属性階層のメンバーとキューブのメジャーの組み合わせによって決まり、キューブの最大サイズを定義します。 この領域には、属性階層メンバーのすべての可能な組み合わせが含まれていることに注意してください。現実の世界では不可能と見なされる可能性がある組み合わせ、つまり都市がパリで、国/地域がイギリス、スペイン、日本、インドなどの組み合わせです。
Autoexists とキューブ空間
autoexists の概念を導入すると、このキューブ空間を、実際に存在するセルのみに限定できます。 あるディメンション内の属性階層のメンバーは、同じディメンション内の別の属性階層のメンバーと共存できない場合があります。
たとえば、City 属性階層、Country 属性階層、および Internet Sales Amount メジャーが含まれたキューブがあるとします。このキューブの空間には、共存できるメンバーのみが含まれます。 たとえば、City 属性階層にニューヨーク、ロンドン、パリ、東京、メルボルンの各都市が含まれている場合です。Country 属性階層には、米国、英国、フランス、日本、オーストラリアの国/地域が含まれます。その後、キューブのスペースには、パリと米国の交差点のスペース (セル) は含まれません。
存在しないセルに対するクエリを実行すると、NULL が返されます。つまり、存在しないセルには計算を含めることができないので、この領域に書き込みを行う計算は定義できません。 たとえば、次のステートメントには、存在しないセルが含まれています。
SELECT [Customer].[Gender].[Gender].Members ON COLUMNS,
{[Customer].[Customer].[Aaron A. Allen]
,[Customer].[Customer].[Abigail Clark]} ON ROWS
FROM [Adventure Works]
WHERE Measures.[Internet Sales Amount]
注意
このクエリでは、 Members (セット) (MDX) 関数を使用して列軸の Gender 属性階層のメンバーのセットを取得し、それを行軸の Customer 属性階層のメンバーの限定的なセットと交差させています。
上記のクエリを実行すると、Aaron A. Allen と Female が交差するセルに NULL が表示されます。 同様に、Abigail Clark と Male が交差するセルに NULL が表示されます。 これらのセルは存在しないため値を含めることができませんが、クエリから返される結果には、存在しないセルが表示される場合があります。
Crossjoin (MDX) 関数を使用して同一ディメンションの異なる属性階層に属するメンバーのクロス積を取得した場合、取得される組は完全なデカルト積ではなく、autoexist によって実際に存在する組のセットのみに限定されます。 たとえば、次のクエリを実行し、実行結果を確認します。
SELECT CROSSJOIN
(
{[Customer].[Country].[United States]},
[Customer].[State-Province].Members
) ON 0
FROM [Adventure Works]
WHERE Measures.[Internet Sales Amount]
注意
このクエリでは、列軸を表す axis(0) の略記である 0 を使用して、列軸を指定しています。
上のクエリを実行すると、クエリ内の各属性階層から、共存できるメンバーのセルのみが返されます。 上のクエリは、 * (クロス積) (MDX) 関数の新しい * バリアントを使用して記述することもできます。
SELECT
[Customer].[Country].[United States] *
[Customer].[State-Province].Members
ON 0
FROM [Adventure Works]
WHERE Measures.[Internet Sales Amount]
上のクエリは、次のように記述することもできます。
SELECT [Customer].[State-Province].Members
ON 0
FROM [Adventure Works]
WHERE (Measures.[Internet Sales Amount],
[Customer].[Country].[United States])
結果セットのメタデータが異なりますが、返されるセルの値は同一です。 たとえば上のクエリで、Country 階層は (WHERE 句の) スライサー軸に移動されたので、結果セットに明示的には出現しません。
上記の 3 つのクエリはそれぞれ、SQL Server SQL Server Analysis Servicesでの自動存在動作の効果を示しています。
ユーザー定義階層とキューブ空間
このトピックのここまでの例では、属性階層を使用してキューブ空間内の位置を定義していました。 キューブ空間内の位置は、ディメンション内の属性階層を基に定義したユーザー定義階層を使用して定義することもできます。 ユーザー定義階層は、ユーザーによるキューブ データの参照を容易にするための、属性階層の階層です。
たとえば、上のセクションの CROSSJOIN クエリは、次のようにも記述できます。
SELECT CROSSJOIN
(
{[Customer].[Country].[United States]},
[Customer].[Customer Geography].[State-Province].Members
)
ON 0
FROM [Adventure Works]
WHERE Measures.[Internet Sales Amount]
先ほど属性階層を使用して定義していたキューブ空間内の位置を、このクエリでは、Customer ディメンション内の Customer Geography ユーザー定義階層で定義しています。 属性階層とユーザー定義階層のどちらを使用しても、キューブ空間内の同じ場所を定義できます。
属性リレーションシップとキューブ空間
関連する属性間に属性リレーションシップを定義すると、(適切な集計が円滑に作成されるようになり) クエリのパフォーマンスが向上するだけでなく、属性階層のメンバーと共に出現する、関連する属性階層のメンバーに影響を及ぼします。 たとえば、City 属性階層のメンバーが含まれた組を定義した場合、その組に Country 属性階層のメンバーが明示的に定義されていなくても、関連する Country 属性階層のメンバーが Country 属性階層の既定メンバーであると予測できます。 ただしこれは、City 属性階層と Country 属性階層の間に属性リレーションシップが定義されている場合に限ります。
次の例は、関連する属性階層に所属する、クエリに明示的に含まれていないメンバーを返します。
WITH MEMBER Measures.x AS
Customer.Country.CurrentMember.Name
SELECT Measures.x ON 0,
Customer.City.Members ON 1
FROM [Adventure Works]
注意
この例では、 WITH キーワードを CurrentMember (MDX) 関数および Name (MDX) 関数 と共に使用して、クエリで使用するための計算されるメンバーを作成しています。 詳細については、「 基本的な MDX クエリ (MDX)」を参照してください。
上のクエリでは、State 属性階層の各メンバーに関連付けられた Country 属性階層のメンバーの名前が返されます。 City 属性と Country 属性の間には属性リレーションシップが定義されているので、予測どおりに Country メンバーが返されます。 ところが、次のクエリで示すように、同一ディメンションの属性階層間に属性リレーションシップが定義されていない場合は、(All) メンバーが返されます。
WITH MEMBER Measures.x AS
Customer.Education.Currentmember.Name
SELECT Measures.x ON 0,
Customer.City.Members ON 1
FROM [Adventure Works]
上のクエリでは、Education と City の間に属性リレーションシップが定義されていないので、(All) メンバー ("All Customers") が返されます。 したがって、Education メンバーが明示的に指定されていない場合、City 属性階層が含まれている組の Education 属性階層の既定のメンバーは Education 属性階層の (All) メンバーになります。
計算コンテキスト
参照
MDX の主な概念 (Analysis Services)
タプル
autoexists
メンバー、組、およびセットの操作 (MDX)
表示部分の合計と非表示部分の合計
MDX 言語リファレンス (MDX)
多次元式 (MDX) リファレンス