デジタル資産計画の手法

デジタル資産計画は、希望する結果や既存の資産のサイズに応じて、さまざまな形で具体化されます。 その取り組みには、さまざまな手法が存在します。 計画サイクルの早期に、手法に関する期待値を定めることが重要です。 期待値が不明確だと、多くの場合、別のインベントリの収集を実施することが伴い、遅れにつながります。 この記事では、分析に対する 3 つの手法の概要を説明します。

ワークロードに基づく手法

トップダウンの評価手法では、セキュリティの側面を評価します。 セキュリティには、データの分類 (ビジネスへの影響が高、中、低)、コンプライアンス、データ主権、セキュリティ リスクの要件などが該当します。 この手法では、アーキテクチャの複雑さが俯瞰的に評価されます。 認証、データ構造、待ち時間の要件、依存関係、アプリケーションの推定耐用年数などの側面が評価の対象となります。

トップダウンの手法では、サービス レベル、統合、メンテナンス期間、監視、および分析情報など、アプリケーションの運用上の要件が測定されます。 これらの側面を分析して考慮した結果は、各クラウド プラットフォームにこのアプリケーションを移行する際の相対的な難易度を反映したスコアになります。対象のプラットフォームは、IaaS、PaaS、および SaaS です。

トップダウンの評価では、運用効率、TCO、投資収益率、その他の適切な財務メトリックなど、アプリケーションの経済的メリットを評価します。 この評価では、アプリケーションの季節性 (1 年の中で需要が急増する時機があるかなど) と、全体のコンピューティング負荷も調査します。

また、サポート対象のユーザーの種類 (カジュアルかエキスパートか、常時ログオンか時折ログオンか) を確認し、必要とされるスケーラビリティとエラスティック性を確認します。 最後に、ビジネス継続性と回復性の要件、さらに、サービスの中断が万一発生した場合にアプリケーションを実行するための依存関係を調べて評価が終了します。

ヒント

ワークロードに基づく手法では、ビジネス系と技術系の利害関係者と面談し、彼らから事例に基づくフィードバックを得る必要があります。 重要な人物と会えるかどうかが、時間面での最大のリスクです。 データ ソースは性質としては事例であるため、正確なコストや時機の見積もりを作成することが難しくなっています。 スケジュールを事前に計画し、収集されたデータを検証します。

資産に基づく手法

資産に基づく手法は、移行するアプリケーションをサポートしている資産に基づいた計画を提供します。 この手法で、構成管理データベース (CMDB) などのインフラストラクチャ評価ツールから、使用状況の統計データを引き出します。

この手法では通常、ベースラインとして IaaS の展開モデルが前提とされます。 このプロセスでは、分析によって各資産の属性が評価されます。

  • メモリ
  • プロセッサの数 (CPU コア)
  • オペレーティング システムの記憶域スペース
  • データ ドライブ
  • ネットワーク インターフェイス カード (NIC)
  • IPv6
  • ネットワークの負荷分散
  • クラスタリング
  • オペレーティング システムのバージョン
  • データベースのバージョン (必要な場合)
  • サポートされているドメイン
  • サードパーティ製のコンポーネントやソフトウェア パッケージなど

この手法でインベントリが作成された資産は、次に、グループ化や依存関係マッピングの目的で、ワークロードやアプリケーションと対応付けられます。

ヒント

資産に基づく手法では、豊富に使用状況の統計データが得られるソースが必要です。 インベントリをスキャンしてデータを収集するのにかかる時間は、時間面での最大のリスクです。 低レベルのデータ ソースでは、資産やアプリケーション間の依存関係を見逃す可能性があります。 インベントリのスキャンに少なくとも 1 か月かける計画にします。 展開の前に依存関係を検証します。

増分型の手法

Microsoft では、増分型の手法を強く推奨します。Microsoft でもクラウド導入フレームワークの多くのプロセスで、この手法が使用されています。 デジタル資産計画では、それは複数フェーズ プロセスに相当します。

  • 初期のコスト分析: 財務面の検証が必要な場合は、前に説明した、資産に基づく手法で作業を開始し、合理化を行わずに、デジタル資産全体の初期コストの計算を行います。 この手法により、最悪の場合のシナリオについてのベンチマークが確立されます。

  • 移行計画: クラウド戦略チームを集めたら、ワークロードに基づく手法を使用して、チームの集合的知識と限られた利害関係者との面談に基づく最初の移行バックログを作成します。 この手法によって簡略版のワークロード評価を迅速に作成し、コラボレーションを促進します。

  • リリース計画: それぞれのリリース時に、最も重要なビジネスへの影響に集中するため、移行バックログを簡潔に整理し、優先度付けを再度行います。 このプロセスでは、次の 5 ~ 10 個のワークロードを、優先度付けしたリリースとして選択します。 この時点で、クラウド戦略チームは、ワークロードに基づく手法を網羅的に完了することに時間を投じます。 この評価をリリースまで遅らせれば、利害関係者の時間をより無駄にしないことになります。 ビジネス面で以前の取り組みの結果が確認され始めるまで、全面的な分析への投資も遅らせることになります。

  • 実装後の分析: どの資産も、移行、最新化、またはレプリケートする前に、個別の評価と集合的なリリースの一部としての評価の両方を行います。 この時点で、正確なサイズ設定と運用上の制約の特定を確実に行うため、資産に基づく手法から得た初期のデータを精査することができます。

ヒント

この増分型の手法では、合理的に計画し、迅速に結果を得られます。 すべての関係者が、意思決定を遅らせるというこの手法について理解しておくことが重要です。 同様に、細部が失われないように、各段階で仮定された事柄を文書化することが重要です。

次のステップ

アプローチを選択したら、インベントリ データを収集します。