チュートリアル - Azure での Linux 仮想マシンの初回の起動時に cloud-init を使用してカスタマイズする方法
適用対象: ✔️ Linux VM ✔️ フレキシブルなスケール セット
前のチュートリアルでは、仮想マシン (VM) に SSH 接続して NGINX を手動でインストールする方法について説明しました。 VM を迅速かつ一貫した方法で作成するには、一般的に、何らかの形で自動化することが必要です。 VM を初回起動時にカスタマイズする一般的なアプローチには、cloud-init を使用する方法があります。 このチュートリアルで学習する内容は次のとおりです。
- cloud-init 構成ファイルを作成する
- cloud-init ファイルを使用する VM を作成する
- VM の作成後に実行されている Node.js アプリを表示する
- Key Vault を使用して証明書を安全に格納する
- cloud-init を使用して NGINX のセキュリティで保護されたデプロイを自動化する
CLI をローカルにインストールして使用する場合、このチュートリアルでは、Azure CLI バージョン 2.0.30 以降を実行していることが要件です。 バージョンを確認するには、az --version
を実行します。 インストールまたはアップグレードする必要がある場合は、Azure CLI のインストールに関するページを参照してください。
cloud-init の概要
cloud-Init は、Linux VM を初回起動時にカスタマイズするために広く使用されているアプローチです。 cloud-init を使って、パッケージをインストールしてファイルを書き込んだり、ユーザーとセキュリティを構成したりすることができます。 初回起動処理中に cloud-init が実行されるので、構成を適用するために追加の手順や必要なエージェントはありません。
cloud-init はディストリビューション全体でも有効です。 たとえば、パッケージをインストールするときに apt-get install や yum install は使用しません。 代わりに、cloud-init ではインストールするパッケージの一覧をユーザーが定義できます。 cloud-init によって、選択したディストリビューションに対してネイティブのパッケージ管理ツールが自動的に使用されます。
Microsoft ではパートナーと協力して、パートナーから Azure に提供されたイメージに cloud-init を含めて、使用できるようにしています。 ディストリビューションごとの cloud-init のサポートに関する詳しい情報については、Azure での VM に対する cloud-init のサポートに関する記事を参照してください。
cloud-init 構成ファイルを作成する
cloud-init が動作していることを確認するには、NGINX をインストールして単純な "Hello World" Node.js アプリを実行する VM を作成します。 次の cloud-init 構成によって、必要なパッケージのインストール、Node.js アプリの作成、アプリの初期化と起動が行われます。
Bash プロンプトまたは Cloud Shell で、cloud-init.txt という名前のファイルを作成し、次の構成を貼り付けます。 たとえば、「sensible-editor cloud-init.txt
」と入力し、ファイルを作成して使用可能なエディターの一覧を確認します。 cloud-init ファイル全体 (特に最初の行) が正しくコピーされたことを確認してください。
#cloud-config
package_upgrade: true
packages:
- nginx
- nodejs
- npm
write_files:
- owner: www-data:www-data
path: /etc/nginx/sites-available/default
defer: true
content: |
server {
listen 80;
location / {
proxy_pass http://localhost:3000;
proxy_http_version 1.1;
proxy_set_header Upgrade $http_upgrade;
proxy_set_header Connection keep-alive;
proxy_set_header Host $host;
proxy_cache_bypass $http_upgrade;
}
}
- owner: azureuser:azureuser
path: /home/azureuser/myapp/index.js
defer: true
content: |
var express = require('express')
var app = express()
var os = require('os');
app.get('/', function (req, res) {
res.send('Hello World from host ' + os.hostname() + '!')
})
app.listen(3000, function () {
console.log('Hello world app listening on port 3000!')
})
runcmd:
- service nginx restart
- cd "/home/azureuser/myapp"
- npm init
- npm install express -y
- nodejs index.js
cloud-init 構成オプションの詳細については、cloud-init の構成例に関するページを参照してください。
仮想マシンの作成
VM を作成する前に、az group create を使用してリソース グループを作成します。 次の例では、myResourceGroupAutomate という名前のリソース グループを場所 eastus に作成します。
az group create --name myResourceGroupAutomate --location eastus
ここで az vm create を使用して VM を作成します。 --custom-data
パラメーターを使用して、cloud-init 構成ファイルを渡します。 現在の作業ディレクトリの外部に構成ファイル cloud-init.txt を保存していた場合には、このファイルの完全パスを指定します。 次の例では、myVM という名前の VM を作成します。
az vm create \
--resource-group myResourceGroupAutomate \
--name myAutomatedVM \
--image Ubuntu2204 \
--admin-username azureuser \
--generate-ssh-keys \
--custom-data cloud-init.txt
VM が作成され、パッケージがインストールされて、アプリが開始されるには、数分かかります。 Azure CLI がプロンプトに戻った後にも引き続き実行するバック グラウンド タスクがあります。 アプリにアクセスできるようになるには、さらに数分かかる場合があります。 VM が作成されたら、Azure CLI によって表示される publicIpAddress
をメモしてください。 このアドレスは、Web ブラウザーから Node.js アプリにアクセスするために使用します。
Web トラフィックが VM にアクセスできるようにするには、az vm open-port を使用してインターネットからポート 80 を開きます。
az vm open-port --port 80 --resource-group myResourceGroupAutomate --name myAutomatedVM
Web アプリのテスト
Web ブラウザーを開き、アドレス バーに「http://<publicIpAddress>」と入力できるようになりました。 VM 作成処理で取得した独自のパブリック IP アドレスを指定します。 Node.js アプリは次の例のように表示されます。
Key Vault の証明書の挿入
省略可能なこのセクションでは、証明書を Azure Key Vault に安全に格納し、VM のデプロイ時に挿入する方法を説明します。 組み込みの証明書を含むカスタム イメージを使用するのではなく、この処理を使用することによって、初回起動時に最新の証明書が VM に挿入されます。 処理の際に、証明書が Azure プラットフォームから流出したり、スクリプト、コマンドラインの履歴、またはテンプレートで公開されたりすることはありません。
Azure Key Vault では、証明書やパスワードなどの暗号化キーと秘密が保護されます。 Key Vault は、キー管理プロセスを合理化し、データにアクセスして暗号化するキーの制御を維持するのに役立ちます。 このシナリオでは、証明書を作成して使用するための Key Vault の概念をいくつか紹介します。ただし、これは Key Vault の使用方法に関する網羅的な概要ではありません。
以下の手順では、次の操作方法を説明します。
- Azure Key Vault を作成する
- 証明書を生成したり、Key Vault にアップロードしたりする
- 証明書からシークレットを作成して VM に挿入する
- VM を作成して証明書を挿入する
Azure Key Vault を作成する
最初に、az keyvault create を使用して Key Vault を作成し、VM をデプロイするときに使用できるようにします。 各 Key Vault には一意の名前が必要であり、その名前はすべて小文字にする必要があります。 次の例の mykeyvault
は一意の Key Vault 名で置き換えてください。
keyvault_name=mykeyvault
az keyvault create \
--resource-group myResourceGroupAutomate \
--name $keyvault_name \
--enabled-for-deployment
証明書を生成して Key Vault に格納する
実際の運用では、az keyvault certificate import を使用して、信頼できるプロバイダーによって署名された有効な証明書をインポートする必要があります。 このチュートリアルでは、az keyvault certificate create で、既定の証明書ポリシーを使用する自己署名証明書を生成する方法を次の例に示します。
az keyvault certificate create \
--vault-name $keyvault_name \
--name mycert \
--policy "$(az keyvault certificate get-default-policy --output json)"
VM で使用する証明書を準備する
VM の作成処理の際に証明書を使用するには、az keyvault secret list-versions を使用して証明書の ID を取得します。 VM は、ブート時に挿入するための特定の形式の証明書を必要とするため、az vm secret format を使って証明書を変換します。 次の例では、以降の手順で使用しやすくするために、コマンドの出力を変数に割り当てています。
secret=$(az keyvault secret list-versions \
--vault-name $keyvault_name \
--name mycert \
--query "[?attributes.enabled].id" --output tsv)
vm_secret=$(az vm secret format --secret "$secret" --output json)
NGINX をセキュリティで保護する cloud-init 構成を作成する
VM を作成するとき、証明書とキーは、保護された /var/lib/waagent/ ディレクトリに格納されます。 VM への証明書の追加と NGINX の構成を自動化するために、前の例の更新された cloud-init 構成を使用できます。
cloud-init-secured.txt というファイルを作成し、次の構成を貼り付けます。 Cloud Shell を使用する場合は、ローカル コンピューター上ではなく、その場所に cloud-init 構成ファイルを作成します。 たとえば、「sensible-editor cloud-init-secured.txt
」と入力し、ファイルを作成して使用可能なエディターの一覧を確認します。 cloud-init ファイル全体 (特に最初の行) が正しくコピーされたことを確認してください。
#cloud-config
package_upgrade: true
packages:
- nginx
- nodejs
- npm
write_files:
- owner: www-data:www-data
path: /etc/nginx/sites-available/default
defer: true
content: |
server {
listen 80;
listen 443 ssl;
ssl_certificate /etc/nginx/ssl/mycert.cert;
ssl_certificate_key /etc/nginx/ssl/mycert.prv;
location / {
proxy_pass http://localhost:3000;
proxy_http_version 1.1;
proxy_set_header Upgrade $http_upgrade;
proxy_set_header Connection keep-alive;
proxy_set_header Host $host;
proxy_cache_bypass $http_upgrade;
}
}
- owner: azureuser:azureuser
path: /home/azureuser/myapp/index.js
defer: true
content: |
var express = require('express')
var app = express()
var os = require('os');
app.get('/', function (req, res) {
res.send('Hello World from host ' + os.hostname() + '!')
})
app.listen(3000, function () {
console.log('Hello world app listening on port 3000!')
})
runcmd:
- secretsname=$(find /var/lib/waagent/ -name "*.prv" | cut -c -57)
- mkdir /etc/nginx/ssl
- cp $secretsname.crt /etc/nginx/ssl/mycert.cert
- cp $secretsname.prv /etc/nginx/ssl/mycert.prv
- service nginx restart
- cd "/home/azureuser/myapp"
- npm init
- npm install express -y
- nodejs index.js
セキュリティで保護された VM を作成する
ここで az vm create を使用して VM を作成します。 証明書のデータは、--secrets
パラメーターを使用して Key Vault から挿入されます。 前の例のように、--custom-data
パラメーターを使用して cloud-init 構成も渡します。
az vm create \
--resource-group myResourceGroupAutomate \
--name myVMWithCerts \
--image Ubuntu2204 \
--admin-username azureuser \
--generate-ssh-keys \
--custom-data cloud-init-secured.txt \
--secrets "$vm_secret"
VM が作成され、パッケージがインストールされて、アプリが開始されるには、数分かかります。 Azure CLI がプロンプトに戻った後にも引き続き実行するバック グラウンド タスクがあります。 アプリにアクセスできるようになるには、さらに数分かかる場合があります。 VM が作成されたら、Azure CLI によって表示される publicIpAddress
をメモしてください。 このアドレスは、Web ブラウザーから Node.js アプリにアクセスするために使用します。
セキュリティで保護された Web トラフィックが VM にアクセスできるようにするには、az vm open-port を使用してインターネットからポート 443 を開きます。
az vm open-port \
--resource-group myResourceGroupAutomate \
--name myVMWithCerts \
--port 443
セキュリティで保護された Web アプリをテストする
Web ブラウザーを開き、アドレス バーに「https://<publicIpAddress>」と入力できるようになりました。 前の VM 作成プロセスの出力で示されているように、独自のパブリック IP アドレスを提供します。 自己署名証明書を使用した場合は、セキュリティ警告を受け入れます。
セキュリティで保護された NGINX サイトと Node.js アプリは、次の例のように表示されます。
次のステップ
このチュートリアルでは、VM の初回の起動時に cloud-init を使用してカスタマイズしました。 以下の方法を学習しました。
- cloud-init 構成ファイルを作成する
- cloud-init ファイルを使用する VM を作成する
- VM の作成後に実行されている Node.js アプリを表示する
- Key Vault を使用して証明書を安全に格納する
- cloud-init を使用して NGINX のセキュリティで保護されたデプロイを自動化する
次のチュートリアルに進み、カスタムの VM イメージを作成する方法を学習してください。