Windows Server AppFabric でのアプリケーションのインポートおよびエクスポート
Windows Server AppFabric は既存の IIS 機能を利用してアプリケーションのインポートまたはエクスポートを行い、MSDeploy (Web 配置ツールまたは Web 配置とも呼ばれます) テクノロジを使用して Web サーバーとの間でのエンティティの移動を行います。MSDeploy を使用すると、IIS Manager や Visual Studio 2010 から、および Windows PowerShell スクリプトを使用して、アプリケーションをシームレスに展開できます。MSDeploy では、展開操作で必要なものをきめ細かく制御でき、展開が意図したとおりに行われないときはトラブルシューティング操作を実行できます。
AppFabric の展開エンティティをインポートおよびエクスポートするには、Web 展開に組み込まれている IIS マネージャーのコマンドを使用します。コンピューター全体、Web サイト全体、またはサイト内の個別のアプリケーションのエンティティをインポートまたはエクスポートできます。説明を簡素化するため、ここではエクスポートまたはインポートするエンティティのスコープを "アプリケーション パッケージ" と呼びます。ただし、インポートまたはエクスポートされるアプリケーション パッケージには、個別のアプリケーション、Web サイト下のすべてのアプリケーション、またはあるコンピューター上のすべての Web サイトが含まれる可能性があることに注意してください。
AppFabric ではさまざまな方法で展開機能を利用できます。
アプリケーションのエクスポート: 既存のアプリケーションをパッケージ化して、ある AppFabric サーバーから別の AppFabric インストールに移動するには、IIS マネージャーの [展開] -> [アプリケーションのエクスポート] コマンドを使用してパッケージをエクスポートします。これにより、レジストリ設定、Web コンテンツ、SQL Server のデータベース情報とスクリプトなどの構成データを含むアプリケーション パッケージが作成されます。これらの情報はすべて、このパッケージを別の AppFabric サーバーに正常にインポートし、正しく動作するために必要な構成を再作成するために必要なものです。サーバー ファームでは、単一のアプリケーションをエクスポートしてから複数のサーバーにインポートし、負荷分散された環境でサービスを実行するための同じ設定を再作成できます。
アプリケーションのインポート: 別の AppFabric サーバーからエクスポートしたパッケージを選択することで、新しいエンティティを AppFabric にインポートできます。または、以前に AppFabric サーバーにインポートされていない、Visual Studio 2010 で作成された新しい展開パッケージを選択することもできます。
重要
Web サーバーの構成を変更する前に、必ずシステムを構成をバックアップしてください。アプリケーションの展開および展開解除は、実行する前にバックアップの必要な操作の例です。
重要
サーバーの運用を開始する前に、各サーバー コンポーネントの展開関係の操作を、必ずテストおよび文書化してください。
スクリプトを使用した展開: コマンド ライン スクリプトを使用して、AppFabric でのアプリケーションの展開操作を実行できます。IIS マネージャーで実行する操作と同様に、これらのスクリプトは MSDeploy テクノロジを利用してこのタスクを実行します。詳細については、「レッスン 2: Windows PowerShell で Order Service アプリケーションを展開する」を参照してください。
前提条件
Web アプリケーションをインポートまたはエクスポートするには、Web 配置ツールをダウンロードする必要があります。ツールの詳細については、「Web 配置ツール」 (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=188372) を参照してください。ダウンロード サイトについては、「Web 配置のインストール」 (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=188373) を参照してください。
Visual Studio 2010 でのアプリケーション パッケージの作成
Visual Studio 2010 は、Web 配置をインストールし、それを使用して Web アプリケーションをパッケージ (.zip ファイル) にエクスポートします。作成されたパッケージは、アプリケーション スコープ レベルで AppFabric に直接インポートできます。Visual Studio 2010 を使用した AppFabric 用の新しいアプリケーション パッケージの作成には、次のプロセスが含まれます。
Visual Studio 2010 のソリューション エクスプローラーでプロジェクトを右クリックし、[プロパティ] をクリックします。
[パッケージ/Web の発行] タブをクリックし、[zip ファイルとして配置パッケージを作成する] チェック ボックスをオンにして、Web 配置パッケージを .zip ファイルとして作成します。[パッケージを作成する場所] ボックスでパスを入力するか参照して指定し、既定の .zip ファイル名のままにするか新しいファイル名を入力します。
ソリューション エクスプローラーでプロジェクトを右クリックし、[配置パッケージのビルド] をクリックして、.zip パッケージ ファイルをパッケージの場所に出力します。
AppFabric でのアプリケーションのインポートとエクスポート
IIS マネージャーから Web アプリケーションのインポートとエクスポートを実行できます。
AppFabric にアプリケーションをインポートするには
[スタート] ボタンをクリックし、[すべてのプログラム] をクリックします。次に、[Windows Server AppFabric] をクリックし、[インターネット インフォメーション サービス (IIS) マネージャー] をクリックして、IIS マネージャーを開きます。
[接続] ウィンドウで、アプリケーションをインポートするレベルでエンティティを選択します。たとえば、アプリケーションをサイト レベルでインポートする場合は、[Default Web Site] ノードを選択します。
[操作] ウィンドウで、[展開] の [アプリケーションのインポート] をクリックし、アプリケーション パッケージのインポート ウィザードを起動します。
ヒント
左側の [接続] ウィンドウでフォルダー エンティティを右クリックし、[展開] をポイントし、[アプリケーションのインポート] を選択して、ウィザードを起動することもできます。
ヒント
Web 配置ツールがコンピューターにダウンロードされていない場合、[アプリケーションのインポート] コマンドは表示されません。詳細については、このトピックの「前提条件」を参照してください。
アプリケーション パッケージのインポート ウィザードの [パッケージの選択] ページで、[参照] をクリックして、アプリケーションの .zip ファイルがあるフォルダーに移動します。
[開く] ページで、.zip ファイルを選択し、[開く] をクリックします。
[パッケージの選択] ページで、[次へ] をクリックします。
ヒント
このプロセスでは、マニフェストを使用してパッケージの内容が表示されます。アプリケーション パッケージを作成すると、パッケージの内容の一覧を含むマニフェストが作成されます。マニフェストはマニフェスト プロバイダーに渡され、マニフェスト プロバイダーは IisApp、ContentPath、および SQLDB プロバイダーを呼び出します。IisApp プロバイダーのエントリでは、IIS 構成情報とコンテンツが指定されています。これにより、アプリケーションが IIS にインポートされます。ContentPath プロバイダーは、インストールの間にフォルダー パスを管理します。SQLDB プロバイダーは、データベース構成を管理し、ユーザーがインポートする構成データ、コンテンツ、およびデータベース情報とスクリプトを選択できるようにします。たとえば、インストール環境に SQL Server がない場合、データベースのコンテンツをインポートする必要はありません。
[パッケージの内容の選択] ページで、パッケージの内容を展開し、インポートするすべての項目を選択します。[次へ] をクリックします。
[アプリケーション パッケージ情報の入力] ページで、左の [接続] ウィンドウに表示する Web アプリケーションの名前を入力するか、または既定値を選択します。[次へ] をクリックしてパッケージをインストールします。
[インストールの進行状況] ページで、パッケージが正常にインストールされたことを確認し、[終了] をクリックします。
ヒント
既定では、アプリケーションは展開先のサイトを実行しているアプリケーション プールを使用します。使用するアプリケーション プールを、.NET Framework 4 で実行している任意のアプリケーション プールに変更できます。
ヒント
MSDeploy を使用してアプリケーションをエクスポートすると、アプリケーションの構成に含まれるバインド プロトコルはエクスポートされません。そのため、アプリケーションで既定の HTTP 以外のプロトコルが必要な場合、アプリケーションをインポートした後でプロトコルは構成されません。アプリケーションをインポートした後で、ユーザーがプロトコルをアプリケーションに対して有効に設定する必要があります。これには 2 つの手順が含まれます。つまり、アプリケーションを含む Web サイトに対するバインドを追加し、アプリケーションに対してプロトコルを有効にします。詳細については、次の手順を参照してください。
ヒント
Dublin のツールは、.NET Framework 4.0 アプリケーションの構成をサポートしていますが、.NET Framework 2.0 アプリケーションのサポートは明示的には提供していません。このため、.NET Framework 2.0 と .NET Framework 4.0 のアプリケーションが同じアプリケーション プール内に混在する場合、構成の不一致などの問題が起きてアプリケーションが破損する可能性もあります。Dublin での管理のため、.NET Framework 2.0 アプリケーションと .NET Framework 4.0 アプリケーションは混在させず、異なるアプリケーション プールに配置することをお勧めします。
AppFabric からアプリケーションをエクスポートするには
[スタート] ボタンをクリックし、[すべてのプログラム] をクリックします。次に、[Windows Server AppFabric] をクリックし、[インターネット インフォメーション サービス (IIS) マネージャー] をクリックして、IIS マネージャーを開きます。
[接続] ウィンドウで、サーバー ノード、[サイト]、[既定の Web サイト] の順に展開します。
エクスポートする Web アプリケーションを選択します。
[操作] ウィンドウで、[展開] の [アプリケーションのエクスポート] をクリックし、アプリケーション パッケージのエクスポート ウィザードを起動します。
ヒント
アプリケーションを右クリックし、[展開] をポイントし、[アプリケーションのエクスポート] を選択して、ウィザードを起動することもできます。
ヒント
サーバー レベルでインポートする場合は、[操作] ウィンドウの [展開] に、[サーバー パッケージのエクスポート] および [サーバーまたはサイト パッケージのインポート] が表示されます。
アプリケーション パッケージのエクスポート ウィザード [パッケージの内容の選択] ページで、パッケージの内容を展開し、インポートする項目を選択します。
パッケージのセキュリティ、リンク拡張、再試行、トレース レベル、および同期を設定するには、[詳細設定] をクリックし、必要な設定を入力して、[OK] をクリックします。
パッケージの既定の設定を変更するには、[コンポーネントの管理] をクリックします。[プロバイダーの設定] 列の最初の空いているセルを選択し、省略記号ボタン ([...]) をクリックして、そのプロバイダーに固有の構成値を入力するためのダイアログ ボックスを表示します。構成設定の値を入力し、[閉じる]、[OK] の順にクリックします。[次へ] をクリックして、ウィザードの次のページに移動します。
ヒント
既定では、パッケージには選択したアプリケーションとそのコンテンツ フォルダーが含まれます。
[パラメーターの選択] ページで、必要なパラメーターが表示されていること、および正しい型、スコープ、および一致が設定されていることを確認します。新しいパラメーターを追加したり、自動生成されるパラメーターを変更したりできます。[次へ] をクリックしてパラメーターの変更を確定し、ウィザードの次のページに移動します。
[パッケージの保存] ページで、[参照] をクリックします。[名前を付けて保存] ダイアログ ボックスで、目的のパスに移動し、ファイル名を入力し、種類として .zip が選択されていることを確認して、[保存] をクリックします。[次へ] をクリックします。
[エクスポートの進行状況と概要] ページで、パッケージが正常に作成されたことを確認し、[完了] をクリックします。
エクスポートしてインポートする前のアプリケーションで HTTP 以外のプロトコルが有効になっていた場合は、アプリケーションを含む Web サイトへのバインドを追加し、アプリケーションに対してプロトコルを有効にする必要があります。Web サイトへのバインドを追加するには、IIS マネージャーを開き、サイトをクリックします。[操作] ウィンドウで [バインド] をクリックし、[追加] をクリックし、[種類] にプロトコルを入力し、バインド情報 (すべてのホスト名を有効にするには "*") を入力して、[閉じる] をクリックします。アプリケーションに対してプロトコルを有効にするには、IIS マネージャーを開き、アプリケーションをクリックします。[操作] ウィンドウで [詳細設定] をクリックし、[有効なプロトコル] ボックスで "http" の後にコンマを入力し、有効にするプロトコルを入力して、[OK] をクリックします。
2011-12-05