ClearType の概要

更新 : 2007 年 11 月

ここでは、Windows Presentation Foundation (WPF) の Microsoft ClearType テクノロジの概要について説明します。

このトピックには次のセクションが含まれています。

  • テクノロジの概要
  • サブピクセル ポジショニング
  • Y 方向のアンチエイリアス
  • ハードウェアの高速化
  • 詳細情報
  • 関連トピック

テクノロジの概要

ClearType は、ラップトップや Pocket PC の画面、フラット パネル モニタなどの、既存の LCD (液晶ディスプレイ) でのテキストの読みやすさを向上させるために Microsoft が開発したソフトウェア テクノロジです。ClearType は、LCD 画面の各ピクセル内の個々の垂直カラー ストライプ要素にアクセスすることによって機能します。ClearType が開発されるまでは、コンピュータで表示可能な最小の詳細レベルは 1 ピクセルでしたが、ClearType を LCD モニタで使用すると、テキストの各部分の幅が 1 ピクセルよりも小さくても表示できるようになります。解像度が上がるとテキスト表示の微細部のシャープさが向上するため、長時間にわたって読んでも苦になりません。

Windows Presentation Foundation (WPF) で利用可能な ClearType は、Microsoft Windows グラフィックス デバイス インターフェイス (GDI) に含まれるバージョンに多数の改良を加えた ClearType の最新バージョンです。

サブピクセル ポジショニング

ClearType の旧バージョンから大きく改善された点の 1 つに、サブピクセル ポジショニングの使用があります。GDI に含まれている ClearType 実装とは異なり、Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType では、ピクセルの境界から開始するグリフだけでなく、ピクセルの途中から開始するグリフも表示できます。グリフの配置の解像度が上がることにより、グリフの間隔や比率の正確さや一貫性が増します。

次の 2 つの例は、サブピクセル ポジショニングを使用した場合にサブピクセル境界でグリフを開始できることを示しています。左側の例は、サブピクセル ポジショニングが採用されていない、旧バージョンの ClearType レンダラを使用してレンダリングしたものです。右側の例は、新しいバージョンの ClearType レンダラで、サブピクセル ポジショニングを使用してレンダリングしたものです。右側のイメージの el が、それぞれ異なるサブピクセルから開始しているために若干異なってレンダリングされていることに注意してください。グリフ イメージはハイ コントラストであるので、テキストを標準サイズで画面に表示したときは、この違いはわかりません。これは、ClearType に組み込まれている高度なカラー フィルタ処理によってのみ実現します。

ClearType の旧バージョンおよび新バージョンによる表示テキスト
2 つのバージョンの ClearType を使用して表示されるテキスト

次の 2 つの例では、旧バージョンの ClearType レンダラでの出力と新バージョンの ClearType レンダラの出力を比較しています。右側に示したサブピクセル ポジショニングでは、画面上の文字の間隔が大きく改善されています。特に、サブピクセル 1 個とピクセル 1 個の差がグリフの幅に占める割合の大きい、小さなサイズの場合によくわかります。2 番目のイメージの方が、文字の間隔が均等に近くなっています。サブピクセル ポジショニングによるさまざまなメリットがテキスト画面全体の外観に及ぼす効果は大幅に増加しましたが、これは ClearType テクノロジが大きく進歩したことを表しています。

ClearType の旧バージョンおよび新バージョンによるテキスト
以前のバージョンの ClearType を使用して表示されるテキスト

Y 方向のアンチエイリアス

Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType のもう 1 つの改善点は、y 方向のアンチエイリアシングです。y 方向のアンチエイリアシングを行わない GDI の ClearType では、x 軸上では高い解像度を得られますが、y 軸上では解像度が低くなります。緩やかな曲線部分の上下では、端がぎざぎざになって読みにくくなります。

次の例では、y 方向のアンチエイリアシングを使用しない場合の効果を示します。この場合、文字の上下で端がぎざぎざになっていることがよくわかります。

滑らかな曲線部分で端がぎざぎざになっているテキスト
緩やかな曲線上にギザギザした境界が付いたテキスト

Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType には、ぎざぎざになっている輪郭を滑らかにする y 方向レベルのアンチエイリアシング機能があります。これは、東アジア言語を読みやすくするために特に重要です。これらの言語の表意文字では、緩やかな曲線の量が水平方向と垂直方向でほぼ同じであるからです。

次の例では、y 方向のアンチエイリアシングの効果を示します。文字の上下の曲線が滑らかに表示されています。

ClearType の y 方向アンチエイリアシングを適用したテキスト
ClearType y 方向アンチエイリアシングを含むテキスト

ハードウェアの高速化

Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType は、ハードウェア アクセラレーションを利用してパフォーマンスを向上させ、CPU の負荷および必要なシステム メモリを削減します。グラフィックス カードのピクセル シェーダおよびビデオ メモリを使用することにより、ClearType では特にアニメーション使用時のテキストのレンダリングが速くなります。

Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType によって、システム全体の ClearType 設定が変更されることはありません。Windows の ClearType を無効にすると、Windows Presentation Foundation (WPF) のアンチエイリアシングがグレースケール モードに設定されます。また、Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType によって、ClearType Tuner PowerToy の設定が変更されることはありません。

Windows Presentation Foundation (WPF) のアーキテクチャ設計における決定事項の 1 つに、解像度に依存しないレイアウトによる高解像度 DPI モニタのサポート向上があります。高解像度モニタの普及は進みつつあるからです。この決定を受けて、Windows Presentation Foundation (WPF) ではエイリアス化されたテキスト レンダリングや、一部の東アジア言語フォントのビットマップをサポートしないことになりました。これらはどちらも解像度に依存するためです。

詳細情報

ClearType の情報

ClearType Tuner PowerToy

参照

概念

ClearType レジストリの設定