厳密に型指定された XML データへの XPathNavigator を使用したアクセス

XPath 2.0 データ モデルの一例として、XPathNavigator クラスは、共通言語ランタイム (CLR) 型に対応した厳密に型指定されたデータを含むことができます。 XPath 2.0 のデータ モデルに従い、要素と属性のみが厳密に型指定されたデータを含むことができます。 XPathNavigator クラスは、データ型を変換する機構に加えて、厳密に型指定されたデータとして XPathDocument または XmlDocument オブジェクト内のデータにアクセスする機構を提供します。

XPathNavigator が公開する型情報

DTD、XML スキーマ定義言語 (XSD) のスキーマ、または他の機構を使用して処理しない限り、XML 1.0 データに型はありません。 XML 要素や属性と関連付けられる型情報のカテゴリは多数あります。

  • 単純 CLR 型 : XML スキーマ言語で共通言語ランタイム (CLR) 型を直接サポートするものはありません。 要素や属性の単純コンテンツを最適な CLR 型として見ることができると便利なので、コンテンツをさらに適切な型に細分化する追加のスキーマ情報がない場合、すべての単純コンテンツは String として型指定できます。 ValueType プロパティを使用することにより、要素と属性の単純コンテンツに最も一致する CLR 型を見つけることができます。 スキーマの組み込み型から CLR 型への対応の詳細については、「System.Xml クラスでの型のサポート」を参照してください。

  • 単純 (CLR) 型のリスト : 単純コンテンツを持つ要素と属性には、空白で区切られた値のリストを含めることができます。 値は XML スキーマで "リスト型" として指定します。XML スキーマがない場合、こうした単純型は 1 つのテキスト ノードとして取り扱われます。 XML スキーマが使用可能な場合、この単純コンテンツは、各項が CLR オブジェクトの 1 つのコレクションに対応した単純型を持つ、これ以上分割不可能な一連の値として取り扱うことができます。 スキーマの組み込み型から CLR 型への対応の詳細については、「System.Xml クラスでの型のサポート」を参照してください。

  • 型指定された値 : スキーマにより検証された単純型の属性と要素は、型指定された値を持ちます。 この値は、数値型、文字列型、または日付型などのプリミティブ型です。 XSD のすべての組み込みの単純型は、単に String としてでなく、さらに適当な型としてノードの値にアクセスできる CLR 型と対応をとることができます。 属性や子要素を持つ要素は複合型と考えられます。 単純コンテンツ (子としてテキスト ノードのみ) を持つ複合型の型指定された値は、そのコンテンツの単純型のそれと同じです。 複合コンテンツ (1 つ以上の子要素) を持つ複合型の型指定された値は、String として返されたすべての子テキスト ノードの連結された文字列値です。 スキーマの組み込み型から CLR 型への対応の詳細については、「System.Xml クラスでの型のサポート」を参照してください。

  • スキーマ言語固有の型名 : 多くの場合、ノードの値へのアクセスに使用されるのは (外部スキーマを適用したため設定された) CLR 型です。 しかし、XML ドキュメントに適用された特定のスキーマに関連付けられた型を調べる必要がある場合もあります。 たとえば、XML ドキュメントを検索して、添付されたスキーマに従って "PurchaseOrder" 型の内容を持つすべての要素を抽出したいが場合があります。 このような型情報はスキーマ検証の結果としてのみ設定され、この情報には XPathNavigator クラスの XmlType プロパティと SchemaInfo プロパティを通じてアクセスできます。 詳細については、下の「スキーマ検証後の情報セット (PSVI)」のセクションを参照してください。

  • スキーマ言語固有の型のリフレクション : また、XML ドキュメントに適用されたスキーマ固有の型の詳細をさらに取得する必要が生じる場合があります。 たとえば、何か特別な計算をするために、XML ファイルの読み込み中に XML ドキュメント中の有効な各ノードについて maxOccurs 属性を抽出する必要がある場合があります。 この情報はスキーマ検証を通じてのみ設定されるので、XPathNavigator クラスの SchemaInfo プロパティを通じてアクセスされます。 詳細については、下の「スキーマ検証後の情報セット (PSVI)」のセクションを参照してください。

XPathNavigator の型指定されたアクセサー

次の表に、ノードの型情報へのアクセスに使用できる XPathNavigator クラスの各種プロパティとメソッドを示します。

プロパティ

説明

XmlType

有効な場合、ノードの XML スキーマ型の情報を含みます。

SchemaInfo

検証後に追加されたノードのスキーマ検証後の情報セットを含みます。 これには、検証情報に加えて、XML スキーマ型情報も含まれます。

ValueType

ノードの型指定された値の CLR 型。

TypedValue

型がノードの XML スキーマ型に最も一致する 1 つ以上の CLR 値としてのノードの内容。

ValueAsBoolean

XPath 2.0 の xs:boolean のキャスト規則に従って、Boolean 値にキャストされた現在のノードの String 値。

ValueAsDateTime

XPath 2.0 の xs:datetime のキャスト規則に従って、DateTime 値にキャストされた現在のノードの String 値。

ValueAsDouble

XPath 2.0 の xsd:double のキャスト規則に従って、Double 値にキャストされた現在のノードの String 値。

ValueAsInt

XPath 2.0 の xs:integer のキャスト規則に従って、Int32 値にキャストされた現在のノードの String 値。

ValueAsLong

XPath 2.0 の xs:integer のキャスト規則に従って、Int64 値にキャストされた現在のノードの String 値。

ValueAs

XPath 2.0 のキャスト規則に従って、変換先の型にキャストされたノードのコンテンツ。

スキーマの組み込み型から CLR 型への対応の詳細については、「System.Xml クラスでの型のサポート」を参照してください。

スキーマ検証後の情報セット (PSVI)

XML スキーマ プロセッサは、XML 情報セットを入力として受け入れ、それをスキーマ検証後の情報セット (PSVI) に変換します。 PSVI は、元の入力 XML 情報セットに新しい情報項目を追加し、新しいプロパティを追加したものです。 XPathNavigator によって公開される PSVI 中の XML 情報セットに追加される情報には 3 つの広範なクラスがあります。

  1. 検証結果 : 要素または属性が問題なく検証されたかどうかの情報。 これは、XPathNavigator クラスの SchemaInfo プロパティの Validity プロパティによって公開されます。

  2. 既定の情報 : 要素または属性の値が、スキーマに定義された既定値により得られたものかどうかを示します。 これは、XPathNavigator クラスの SchemaInfo プロパティの IsDefault プロパティによって公開されます。

  3. 型のコメント : スキーマ コンポーネントへの参照。これは型の定義や、要素と属性の宣言である場合があります。 ノードが有効な場合、XPathNavigatorXmlType プロパティは、ノード固有の型情報を含みます。 検証された後に編集されているときなど、ノードの有効性が不明な場合は、 XmlType プロパティが null に設定されますが、この場合でも、XPathNavigator クラスの SchemaInfo プロパティの各種プロパティから型情報を入手できます。

次の例は、XPathNavigator によって公開されるスキーマ検証後の情報セット内の情報の使用方法を示します。

Dim settings As XmlReaderSettings = New XmlReaderSettings()
settings.Schemas.Add("https://www.contoso.com/books", "books.xsd")
settings.ValidationType = ValidationType.Schema

Dim reader As XmlReader = XmlReader.Create("books.xml", settings)

Dim document As XmlDocument = New XmlDocument()
document.Load(reader)
Dim navigator As XPathNavigator = document.CreateNavigator()
navigator.MoveToChild("books", "https://www.contoso.com/books")
navigator.MoveToChild("book", "https://www.contoso.com/books")
navigator.MoveToChild("published", "https://www.contoso.com/books")

Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.SchemaType.Name)
Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.Validity)
Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.SchemaElement.MinOccurs)
XmlReaderSettings settings = new XmlReaderSettings();
settings.Schemas.Add("https://www.contoso.com/books", "books.xsd");
settings.ValidationType = ValidationType.Schema;

XmlReader reader = XmlReader.Create("books.xml", settings);

XmlDocument document = new XmlDocument();
document.Load(reader);
XPathNavigator navigator = document.CreateNavigator();
navigator.MoveToChild("books", "https://www.contoso.com/books");
navigator.MoveToChild("book", "https://www.contoso.com/books");
navigator.MoveToChild("published", "https://www.contoso.com/books");

Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.SchemaType.Name);
Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.Validity);
Console.WriteLine(navigator.SchemaInfo.SchemaElement.MinOccurs);

この例は、books.xml ファイルを入力として使用します。

<books xmlns="https://www.contoso.com/books">
    <book>
        <title>Title</title>
        <price>10.00</price>
        <published>2003-12-31</published>
    </book>
</books>

また、books.xsd スキーマも入力として使用します。

<xs:schema xmlns="https://www.contoso.com/books" 
attributeFormDefault="unqualified" elementFormDefault="qualified" 
targetNamespace="https://www.contoso.com/books" 
xmlns:xs="http://www.w3.org/2001/XMLSchema">
    <xs:simpleType name="publishedType">
        <xs:restriction base="xs:date">
            <xs:minInclusive value="2003-01-01" />
            <xs:maxInclusive value="2003-12-31" />
        </xs:restriction>
    </xs:simpleType>
    <xs:complexType name="bookType">
        <xs:sequence>
            <xs:element name="title" type="xs:string"/>
            <xs:element name="price" type="xs:decimal"/>
            <xs:element name="published" type="publishedType"/>
        </xs:sequence>
    </xs:complexType>
    <xs:complexType name="booksType">
        <xs:sequence>
            <xs:element name="book" type="bookType" />
        </xs:sequence>
    </xs:complexType>
    <xs:element name="books" type="booksType" />
</xs:schema>

ValueAs プロパティによる型指定された値の取得

ノードの型指定された値は、XPathNavigatorTypedValue プロパティにアクセスして取得することができます。 場合により、ノードの型指定された値を別の型に変換する必要がある場合があります。 一般的な例として、XML ノードから数値を取得する場合があります。 たとえば、次のような未検証で型指定されていない XML ドキュメントがあるとします。

<books>
    <book>
        <title>Title</title>
        <price>10.00</price>
        <published>2003-12-31</published>
    </book>
</books>

XPathNavigator が price 要素上に位置している場合、XmlType プロパティは null となり、ValueType プロパティは String であり、TypedValue プロパティは文字列 10.00 です。

しかし、ValueAsValueAsDoubleValueAsInt、または ValueAsLong のメソッドとプロパティを使用して、値を数値として抽出することは可能です。 次の例では、ValueAs メソッドを使用してキャストを実行します。

Dim document As New XmlDocument()
document.Load("books.xml")
Dim navigator As XPathNavigator = document.CreateNavigator()
navigator.MoveToChild("books", "")
navigator.MoveToChild("book", "")
navigator.MoveToChild("price", "")

Dim price = navigator.ValueAs(GetType(Decimal))
Dim discount As Decimal = 0.2

Console.WriteLine("The price of the book has been dropped 20% from {0:C} to {1:C}", navigator.Value, (price - price * discount))
XmlDocument document = new XmlDocument();
document.Load("books.xml");
XPathNavigator navigator = document.CreateNavigator();
navigator.MoveToChild("books", "");
navigator.MoveToChild("book", "");
navigator.MoveToChild("price", "");

Decimal price = (decimal)navigator.ValueAs(typeof(decimal));

Console.WriteLine("The price of the book has been dropped 20% from {0:C} to {1:C}", navigator.Value, (price - price * (decimal)0.20));

スキーマの組み込み型から CLR 型への対応の詳細については、「System.Xml クラスでの型のサポート」を参照してください。

参照

参照

XmlDocument

XPathDocument

XPathNavigator

概念

XPath データ モデルを使用した XML データの処理

XPathNavigator を使用するノード セットのナビゲーション

XPathNavigator を使用する属性と名前空間のナビゲーション

XpathNavigator を使用した XML データの抽出

その他の技術情報

System.Xml クラスでの型のサポート