ユニファイド メッセージングのオーディオ コーデックについて

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2008-03-20

Microsoft Exchange Server 2007 ユニファイド メッセージング (UM) では、コーデックを使用してボイス メール メッセージを格納します。IP ゲートウェイまたは IP 構内交換機 (PBX) と、ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされている Exchange 2007 を実行しているサーバーの間では、また別のコーデックを使用します。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングは、次の 3 つのオーディオ コーデックのいずれかを使用して音声メッセージを作成および格納できます。

  • Windows Media オーディオ (WMA)
  • GSM (Group System Mobile) 06.10
  • G.711 リニア PCM (パルス符号変調)

ただし、G.711 (PCMA および PCMU) コーデックと G.723.1 コーデックは、IP ゲートウェイとユニファイド メッセージング サーバーの間で使用される VoIP コーデックです。

ユニファイド メッセージング システムの計画段階で、組織のニーズと要件に基づいて最適なオーディオ コーデックを選択する必要があります。ここでは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングで使用でき、UM の展開プランを立てるのに役立つオーディオ コーデックについて説明します。

important重要 :
64 ビットのユニファイド メッセージング サーバーで WMA UM ダイヤル プランのコーデックを使用する場合は、Windows Media エンコーダをインストールする必要があります。Windows Media エンコーダをインストールする方法の詳細については、「x64 ベースのコンピュータの Windows Media オーディオ 9 音声コーデックの可用性」または Microsoft ダウンロード センターを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

コーデック

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでは、2 種類のコーデックが使用されます。1 つは、IP ゲートウェイとユニファイド メッセージング サーバー間または PBX と IP ゲートウェイ間で使用されるコーデックで、使用するコーデックは PBX の種類に応じて異なります。もう 1 つは、ユーザー宛ての音声メッセージをエンコードおよび格納するためのコーデックです。

"コーデック" という用語は、"コーディング" と "デコーディング" という用語を組み合わせたものであり、デジタル オーディオ データと共に使用されます。コーデックとは、デジタル データをオーディオ ファイル形式またはオーディオ ストリーミング形式に変換するソフトウェア プログラムのことで、このコーデックを使用して、アナログの音声信号をデジタル バージョンの音声信号に変換します。コーデックの音質、使用するために必要な帯域幅、およびエンコーディングの実行に必要なシステム要件は、コーデックごとに異なります。

通常の電話を公衆交換電話網 (PSTN) 経由で使用した場合、音声は電話回線を介してアナログ形式でトランスポートされます。ただし、ボイス オーバー IP (VoIP) では、音声をデジタル信号に変換する必要があります。この変換プロセスは、エンコーディングと呼ばれます。エンコーディングは、コーデックによって実行されます。デジタル化された音声が宛先に到着したら、通話先の相手が発信者の声を聞いて理解できるように、その音声をデコードして元のアナログ形式に戻す必要があります。

VoIP コーデック

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでは、IP ゲートウェイとユニファイド メッセージング サーバー間または PBX と IP ゲートウェイ間で 3 種類のコーデックを使用できます。使用するコーデックは、PBX の種類によって決まります。ユニファイド メッセージング サーバーは、IP ゲートウェイまたは IP PBX から次の VoIP コーデックを受け付けることができます。

  • G.711 µ-law
  • G.711 A-law
  • G.723.1

G.711 は、オーディオ コーデックで使用するために開発された標準です。G.711 の標準で定義されている主なアルゴリズムには 2 つあります。北米と日本で使用されている µ-law アルゴリズムと、ヨーロッパやその他の国で使用されている A-law アルゴリズムです。G.723.1 オーディオ コーデックは主に VoIP アプリケーションで使用されており、使用するにはライセンスが必要です。この G.723.1 は、高品質で、圧縮率が高いタイプのコーデックです。

ユニファイド メッセージング サーバーと、サポートされている IP ゲートウェイまたは IP PBX はどちらも、G.711 コーデックと G.723.1 コーデックの両方を提供できます。ただし、ユニファイド メッセージング サーバーは、レジストリ内の WireCodecList キーに基づいて優先コーデックを選択します。既定では、最初は G.723.1 コーデックが使用されます。ユニファイド メッセージング サーバーと IP ゲートウェイまたは IP PBX の間で G.723.1 以外のコーデックを使用する場合は、IP ゲートウェイまたは IP PBX 上の構成を変更することをお勧めします。レジストリ内の WireCodecList キーの値を追加、削除、または変更しないでください。ユニファイド メッセージング サーバーは、IP ゲートウェイまたは IP PBX で使用されているコーデックを特定してから、レジストリ内の一覧から該当するコーデックを選択します。

次の表に、一般的な VoIP コーデックをまとめます。

VoIP コーデック

VoIP コーデック 帯域幅 (Kbps) 説明

G.711

64

このコーデックに必要な処理はごくわずかです。双方向の通信には、最低 128 Kbps が必要です。

G.723.1

5.3/6.3

このコーデックは、高品質のオーディオと共に、高い圧縮率を提供します。G.711 コーデックより多くの処理が必要です。G.723.1 コーデックでは、使用する帯域幅を抑えられますが、提供するオーディオ品質は低下します。

UM 音声メッセージ格納コーデック

ユニファイド メッセージング ダイヤル プランは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングの動作に不可欠です。既定では、UM ダイヤル プランを作成するとき、WMA オーディオ コーデックが使用されます。ただし、UM ダイヤル プランの作成後、UM ダイヤル プランで GSM 06.10 または G.711 リニア PCM オーディオ コーデックを使用するように構成できます。

それぞれのオーディオ コーデックには長所と短所があります。WMA オーディオ コーデックは、その音質と圧縮プロパティのため、既定のオーディオ コーデックとして選択されました。GSM 06.10 と G.711 リニア PCM オーディオ コーデックは、他の種類のメッセージング システムをサポートする機能があるため、使用可能なオプションとして追加されました。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングのプランを立てるうえで大切なのは、音声メッセージで作成するオーディオ ファイルのサイズと相対的な音質のバランスを取ることです。一般に、オーディオ ファイルのビット レートが高いほど、音質は良くなります。ただし、オーディオ ファイルを圧縮するかどうかも考慮に入れる必要があります。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングで使用される各オーディオ コーデックのサンプル ビット レート (bps) と圧縮プロパティは次のとおりです。

UM 音声メッセージ格納コーデック

音声メッセージ格納コーデック ビット 圧縮ファイル

WMA

16 ビット

G.711 PCM

16 ビット

不可

GSM 06.10

8 ビット

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでは、WMA、G.711 リニア PCM、および GSM 06.10 オーディオ コーデックを使用して、音声メッセージ用の .wma および .wav オーディオ ファイルを作成します。ただし、作成されるファイルの種類は、音声メッセージのオーディオ ファイルの作成に使用されるオーディオ コーデックによって異なります。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでは, .wma オーディオ コーデックにより .wma オーディオ ファイルが作成され、GSM 06.10 と G.711 リニア PCM オーディオ コーデックにより .wav オーディオ ファイルが作成されます。どちらの種類のオーディオ ファイルも、電子メール メッセージと共に、音声メッセージの受信者に送信されます。

多くの場合、デジタル データのコーディングと同時に圧縮が行われ、デコーディングと同時に圧縮解除が行われます。オーディオ圧縮は、オーディオ データ ファイルのサイズを減らすデータ圧縮の形式の 1 つです。オーディオ コーデックで使用されるオーディオ圧縮アルゴリズムによって, .wma または .wav オーディオ ファイルが圧縮されます。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでは、使用されるオーディオ圧縮アルゴリズムの種類は、UM ダイヤル プランのプロパティで選択されたオーディオ コーデックの種類に基づきます。オーディオ ファイルを作成および圧縮してから、音声メッセージに添付します。

場合によっては、圧縮と圧縮解除の間にデジタル データの情報が失われることがあります。オーディオ ファイルの圧縮に使用される圧縮率が高いほど、変換時の情報損失は多くなります。ただし、オーディオ ファイルのサイズが小さいため、使用するディスク容量は少なくなります。逆に、圧縮率が低いほど情報損失は少なくなります。ただし、各オーディオ ファイルのサイズは増えるため、使用するディスク容量は多くなります。

Exchange 2007 SP1 の新機能

Exchange 2007 Service Pack 1 (SP1) では、音声メッセージ録音に対応するため、RTAudio 広帯域またはハイファイ オーディオに対するサポートが追加されました。ただし、ハイファイ オーディオについては、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 を適切に統合した後でのみ使用できます。RTAudio を有効にするには、UM ダイヤル プランをセッション開始プロトコル (SIP) URI の種類のダイヤル プランとして構成し、そのダイヤル プランの通話応答コーデックを WMA に設定する必要があります。

important重要 :
RTAudio は、Office Communications Server 2007 が展開されていない環境では使用できません。これらの環境では、ダイヤル プランが SIP URI ではなく、内線番号に設定されているためです。

各着信呼び出しには、ユニファイド メッセージング サーバーへの受信と、ユニファイド メッセージング サーバーからの送信の 2 つのメディア ストリームがあります。ダイヤル プランの種類が SIP URI に設定され、ダイヤル プランの通話応答コーデックが WMA に設定されていると、ユニファイド メッセージング サーバーは受信メディア ストリームに対して RTAudio VoIP コーデックを選択しようとします。ネゴシエーションが成功した場合、通話応答の呼び出しまたは Office Communicator 2007 から発信された呼び出しには、受信ストリームの RTAudio コーデックが使用されます。

note注 :
電話での再生の機能を使用して実行された呼び出しでは、RTAudio コーデックは使用されません。電話での再生を使用して実行された呼び出しの受信ストリームでは、G.711 または G.723.1 コーデックが使用されます。

RTAudio コーデックが使用されている場合、録音される音声メッセージはハイファイで録音され, .wma の拡張子を持つオーディオ ファイルとして格納されます。Office Outlook 2007 または Outlook Web Access でユーザーに音声メッセージが再生されたとき、そのユーザーにはハイファイ オーディオの音声メッセージが聞こえます。ネゴシエーションが失敗した場合は、G.711 コーデックまたは G.723.1 コーデックのどちらかが使用されます。G.711 コーデックと G.723.1 コーデックは、どちらも狭帯域コーデックです。これらのコーデックが VoIP コーデックとして使用されている場合、音声メッセージは, .wma の拡張子を持つ狭帯域オーディオ ファイルとして録音および格納されます。

送信メディア ストリームは常に、G.711 コーデックまたは G.723.1 コーデックのどちらかを使用してネゴシエートされます。つまり、発信者には常に、電話から狭帯域オーディオが聞こえます。これはまた、呼び出しが Office Communicator を使用して実行された場合にも当てはまります。

ユニファイド メッセージング サーバーによる RTAudio 処理には、G.711 または G.723.1 コーデックより多くの CPU サイクルが使用されます。Office Communications Server 2007 を正常に統合したが、使用される CPU サイクル数を削減するために RTAudio を無効にしたい場合は、次の方法を使用できます。

  • ダイヤル プランの通話応答コーデックまたは格納コーデックを GSM または PCM に設定します。
  • レジストリ内の設定を無効にします。レジストリ キーは、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Microsoft Speech Server\2.0\WireCodecList です。RTAudio を無効にするには、レジストリ キーにあるコーデックの一覧から RTAudio16KHz と RTAudio8KHz を削除します。
    important重要 :
    WireCodecList キーの他の値やキーへの追加、変更、または削除はサポートされません。
note注 :
レジストリに対して誤った編集を行うと、重大な問題が発生する可能性があり、オペレーティング システムの再インストールが必要になる場合があります。 誤ったレジストリ編集に起因する問題は、解決できない場合もあります。 レジストリを編集する前に、重要なデータをバックアップしてください。

UM メッセージのサイズ

UM では、音声メッセージの作成に使用するオーディオ コーデックを、WMA、GSM 06.10、および G.711 PCM Linear の中から選択して設定することができます。WMA オーディオ コーデックは、常に Windows Media 形式で保存され、添付ファイルの拡張子は .wma になります。GSM または G.711 リニア PCM オーディオ コーデックを使用してエンコードされたオーディオ ファイルは、常に RIFF/WAV 形式で保存され、添付ファイルは .wav ファイル名拡張子のファイルになります。

ユニファイド メッセージング音声メッセージのサイズは、音声データを保持する添付ファイルのサイズによって異なります。また、添付ファイルのサイズは、次の要素によって異なります。

  • ボイス メールの録音時間
  • 使用されるオーディオ コーデック
  • オーディオ ファイルの保存形式

次の図は、UM で使用できる 3 つのオーディオ コーデックのボイス メール録音時間によって、オーディオ ファイルのサイズがどのように異なるかを示しています。

note注 :
この図では、通話応答音声メッセージの平均の長さは約 30 秒です。

UM_Message_Sizing

WMA

WMA は、3 種類のオーディオ コーデックの中で最も圧縮率が高いコーデックです。圧縮サイズは、10 秒のオーディオごとに約 11,000 バイトです。ただし, .wma ファイル形式には .wav ファイル形式より大きなヘッダー セクションがあります。.wma ファイルのヘッダー セクションは約 7 KB ですが, .wav ファイルのヘッダー セクションは 100 バイト未満です。WMA オーディオは 15 秒より長く録音されていますが、サイズは GSM オーディオ録音より小さくなっています。したがって、最も小さく、高音質のオーディオ ファイルが必要な場合は、WMA オーディオ コーデックを使用します。

G.711 リニア PCM

G.711 リニア PCM オーディオ コーデックでは、圧縮されていない .wav オーディオ ファイルが作成されます。したがって、G.711 リニア PCM .wav オーディオ ファイルは、録音時間が同じであるとき、GSM および WMA オーディオ コーデックに比べ、最も大きな容量を占有します。G.711 リニア PCM .wav オーディオ ファイルは、10 秒のオーディオごとに 160,000 バイト以上になります。G.711 リニア PCM .wav オーディオ ファイルは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングで使用される 3 つのオーディオ コーデックの中で最も高音質です。しかし、音声メッセージを聞くほとんどのユーザーにとって、WMA および GSM オーディオ コーデックを使用して作成されたオーディオ ファイルの音質も問題ありません。

GSM

GSM オーディオ コーデックでは、圧縮された .wav オーディオ ファイルが作成されます。GSM .wav オーディオ ファイルのサイズは、10 秒のオーディオごとに 16,000 バイトを少し超える程度です。しかし、GSM で作成されるオーディオ ファイルは、WMA オーディオ コーデックで作成されるオーディオ ファイルよりサイズは大きくなります。したがって、音声メッセージの音質とサイズのバランスを考えると、GSM 以外を選択した方がよい場合もあります。

詳細情報

UM ダイヤル プランの詳細については、「ユニファイド メッセージング ダイヤル プランについて」を参照してください。

UM ダイヤル プランでオーディオ コーデックを構成する方法の詳細については、「ユニファイド メッセージングのダイヤル プランを変更する方法」を参照してください。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。