スタンバイ連続レプリケーション : データベースの移植性

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1

トピックの最終更新日: 2008-11-18

ここでは、Woodgrove 銀行という組織において、スタンバイ連続レプリケーション (SCR) とデータベースの移植性を使用して、単一のデータベースの障害から回復するシナリオについて説明します。このシナリオでは、SCR のソース データベースに物理的な破損が検出され、管理者は SCR のターゲット データベースをアクティブ化するという決定を行います。アクティブ化を実行している間、SCR は無効になり、SCR のターゲット データベースが運用データベースとしてマウントされ、ユーザー メールボックスのホームが変更されます。クライアントに対するデータ アクセスが復元された後で、冗長性と SCR 対象への保護を復元するため、SCR は再びストレージ グループに対して有効化されます。

SCR とデータベースの移植性

Woodgrove 銀行は、Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) を展開しており、SCR を使用してリモートのメールボックス サーバーにストレージ グループの冗長なコピーを確保しています。両方のメールボックス サーバーは、同じ Active Directory ディレクトリ サービス サイトに置かれ、Active Directory 統合 DNS サーバーを使用するように構成されています。Active Directory サイトの Active Directory レプリケーションの間隔は 15 分に構成されています。

単一のデータベース MBX1 が格納されている単一のストレージ グループ SG1 のトランザクション ログ ファイルがレプリケートされるように、SCR が構成されています。EXMBX1 は SCR のソース コンピュータであり、EXMBX2 は SCR のターゲット コンピュータです。ストレージ グループ ファイル (トランザクション ログ ファイルを含む) のパスは E:\SG1、データベース ファイルのパスは D:\SG1\MBX1.EDB です。これらのパスは、ソース コンピュータとターゲット コンピュータの両方で使用されます。

これらの割り当ては、次のコマンドを使用して構成されました。

Enable-StorageGroupCopy EXMBX1\SG1 -StandbyMachine EXMBX2

SG1 の SCR の稼働状態は、Exchange 管理シェルで Test-ReplicationHealth および Get-StorageGroupCopyStatus コマンドレットを使用して確認されました。以下に例を示します。

Get-StorageGroupCopyStatus EXMBX1\SG1 -StandbyMachine EXMBX2 | fl

SCR のターゲットのアクティブ化処理の時間を短縮するため、EXMBX2 には、データベースの移植性処理の一環として使用されるストレージ グループおよびデータベースが事前に構成されています。そのストレージ グループとデータベースには、それぞれ SG1PORT と MBX1PORT という名前が付けられています。

important重要 :
SG1PORT と MBX1PORT は、SCR のターゲットのストレージ グループとデータベース ファイルとは別のものです。したがって、SG1PORT と MBX1PORT のパスは、SCR のターゲットのパスと重複しない一時パスを使用して構成する必要があります。
note注 :
MBX1PORT を作成した後に、それを一度マウントしてからマウント解除すること、また、すべてのストレージ グループ ファイルとデータベース ファイルを削除することをお勧めします。

SCR のターゲットのアクティブ化

メッセージ通信管理者は、SCR のソース データベースが物理的に破損していることを示すアプリケーション イベント ログ エントリを発見しました。SG1 の SCR を有効にしていたため、SG1 の SCR のターゲット データベースの手動アクティブ化を実行して、データの可用性を復元するという決定がすぐに行われました。SCR のターゲット コピーのアクティブ化は、SG1 のデータベースのマウント解除から始まります。これによって、SCR のターゲット データベースがマウントできるようになり、影響を受けるメールボックス データベースにあるメールボックスのホームを変更できるようになります。これには、以下の手順を順に実行します。

  1. 次のコマンドを使用して、SCR のソース データベースのマウントを解除します。

    Dismount-Database EXMBX1\SG1\MBX1
    
  2. SCR を無効にし、SCR のターゲット データベースをマウントできるようにする処理では、Restore-StorageGroupCopy コマンドレットを実行します。このタスクによって、ストレージ グループのデータベースがマウント可能であるとマークされます。ストレージ グループのデータベースのマウントによってデータの損失が生じる場合には、それに関するレポートが提供されます。また、ストレージ グループのアクティブ コピーによって生成されたすべてのログ ファイルが、パッシブ コピーのストレージ グループ ファイルの場所に存在するかどうかも確認されます。存在しないログ ファイルがあった場合、そのログ ファイルのコピーが実行されます。次のコマンドを使用して、SCR を無効にし、ターゲット データベースをマウントできるようにします。

    Restore-StorageGroupCopy EXMBX1\SG1 -StandbyMachine EXMBX2
    
important重要 :
SCR のソースが利用できない場合は、Restore-StorageGroupCopy コマンドに Force パラメータを追加する必要があります。
  1. Restore-StorageGroupCopy コマンドが完了した後、管理者はデータベースがクリーン シャットダウン状態になっているかどうかを確認する必要があります。データベースがダーティ シャットダウン状態になっている場合、管理者は、データベースに対して Exchange Server データベース ユーティリティ (Eseutil) の回復モード (Eseutil /r) を実行することによって、データベースをクリーン シャットダウン状態にすることができます。Eseutil の回復モードを実行する手順の詳細については、「Eseutil /R (回復) を実行する方法」を参照してください。

    note注 :
    ストレージ グループのプレフィックス (たとえば E00 や E01) が、SCR のソース ストレージ グループ (EXMBX1\SG1) と、データベースの移植性に使用される SCR のターゲット ストレージ グループ (EXMBX2\SG1PORT) で同じである場合、Eseutil を回復モードで実行する必要はありません。最後のデータベース マウント処理によって、レプリケートされたすべてのログ ファイルの再生後に、データベースはクリーン シャットダウン状態になります。
  2. データベースがクリーン シャットダウン状態になった後、管理者は 2 つのコマンドを実行して、ストレージ グループ ファイルおよびデータベース ファイルの新しい場所が反映されるように Active Directory を更新します。次のコマンドを使用して、SG1PORT および MBX1PORT のパスを、一時パスから SCR のターゲットのストレージ グループおよびデータベース ファイルのパスに変更します。

    Move-StorageGroupPath EXMBX2\SG1PORT -SystemFolderPath E:\SG1 -LogFolderPath E:\SG1 -ConfigurationOnly
    Move-DatabasePath EXMBX2\SG1PORT\MBX1PORT -EdbFilePath D:\SG1\MBX1.EDB -ConfigurationOnly
    
  3. 次に、復元処理中にデータベースを上書きできるようにする必要があります。これを行うには、Exchange 管理コンソールで、データベース オブジェクトのプロパティの [復元時はこのデータベースを上書きする] チェック ボックスをオンにします。このタスクは、Exchange 管理シェルで次のコマンドを使用して実行することもできます。

    Set-Mailboxdatabase EXMBX2\SG1PORT\MBX1PORT -AllowFileRestore:$true
    
  4. 復元中にデータベースを上書きできるように構成した後、管理者は次のコマンドを使用してデータベースをマウントできます。

    Mount-Database EXMBX2\SG1PORT\MBX1PORT
    
  5. データベースをマウントした後、SCR のソース データベースをホームにしていたメールボックスは、EXMBX2 上の MBX1PORT を指すようにホームを変更する必要があります。これを行うには、Get-Mailbox コマンドレットを実行し、その出力をパイプライン処理によって Move-Mailbox コマンドレットに渡します。この処理では、Get-Mailbox コマンドレットの出力がパイプライン処理によって Move-Mailbox コマンドレットに渡される際に、その中に Microsoft Exchange System Attendant およびシステム メールボックスが含まれないようにすることが重要です。これを行うには、次のコマンドを実行します。

    Get-Mailbox -Database EXMBX1\SG1\MBX1 |where {$_.ObjectClass -NotMatch '(SystemAttendantMailbox|ExOleDbSystemMailbox)'}| Move-Mailbox -ConfigurationOnly -TargetDatabase EXMBX2\SG1PORT\MBX1PORT
    

この時点で、MBX1PORT へのクライアント アクセスが可能になります。ただし、EXMBX1\SG1\MBX1 から EXMBX2\SG1PORT\MBX1PORT にメールボックスが移動された後、ユーザーが実際にそのメールボックスにアクセスできるかどうかについては、以下のいくつかの要因が関係します。

  • Active Directory のレプリケーションの遅延   ディレクトリ サーバーの数によっては、環境全体に更新が伝達するまで時間がかかる場合があります。
  • クライアント アクセスの方法   ユーザーのクライアント アクセス サーバーによって使用されるディレクトリ サーバーが新しいパスに更新された後は、Microsoft Office Outlook 2007 を実行しているメッセージング クライアントと、Outlook 以外のクライアントは、ユーザーのメールボックスにアクセスできるようになります。Outlook 2003 およびそれ以前のバージョンを実行しているメッセージング クライアントでは、元のサーバーが停止などによって使用できない場合、新しいサーバー名を使用するようにユーザーのデスクトップ メッセージング プロファイルを更新する必要があります。元のサーバーがオンラインになっており、クライアントの要求に応答できる場合は、Outlook 2003 およびそれ以前のバージョンを実行しているメッセージング クライアントのデスクトップ メッセージング プロファイルは、新しいサーバー名を使用するように元のサーバーによって自動的に更新されます。手動で変更する必要はありません。

SCR のターゲットをアクティブ化した後の冗長性の復元

クライアントが自分のメールボックスおよびメールボックス データにアクセスできるようになった後、最初に実行する手順は、SCR を再度有効にして冗長性を確立することです。これを行うには、EXMBX1 から残りのストレージ グループおよびデータベース ファイルを削除します。ファイルを削除した後に、EXMBX1\SG1\MBX1 のパスを一時的な場所に移動して、EXMBX1 を EXMBX2 の SCR のターゲットにすることができます。これによって、環境の冗長性が復元されます。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。