SharePoint サービスを確立および管理する
Microsoft Office SharePoint Server 2007 をサポートする IT サービスを開発する場合の成功のカギは、サービスを安全かつ費用効果の高い方法で内部顧客のビジネス ニーズに対応させる貴社のガバナンス能力にあります。この記事では、Office SharePoint Server 2007 をホストする IT サービスの一般的な要素をまとめ、Office SharePoint Server サービスを管理する場合の主な成功要因を示唆し、 3 層の SharePoint サービスの例を記載します。
SharePoint サービスとは
成功するサービスの要素
SharePoint サービスの管理対象
複数のサービスの作成
SharePoint サービスとは
SharePoint サービスとは、SharePoint 製品とテクノロジを使用して、ホストされたサイトとポータルを提供する IT サービスです。次のようなサービスを提供します。
サイト コレクション、Web アプリケーション、 サーバー ファームなど、一定範囲のサイトとポータル
バックアップと復元
コンテンツ ストレージ
カスタマイズのサポート
セキュリティ
速度と可用性に応じたサービス レベル
成功するサービスの要素
貴社の Office SharePoint Server サービスを構想および実装するときは、次の要素を考慮します。これらはガバナンスの成否を左右します。
ガバナンス グループの結成と利用
Office SharePoint Server をサポートする IT サービスは、特に関係役員、事業部のリーダー、有力なインフォメーション ワーカー、IT 管理者、IT 技術専門家を含むグループによって管理する必要があります。ガバナンス グループの目的は、サービスを監視することです。このような立場から、ガバナンス グループは、サービスの最初の提供内容とサービスの継続ポリシーを定め、これに応じて成否を評価します。
サービスについての連絡
策定したガバナンス ポリシーは、社内に周知する必要があります。一連のサービスを記載した Web サイトを保守管理します。
サービスの利用を推奨する
独自サーバーを展開せず、SharePoint サービスを利用することを、ユーザーに推奨します。分離されたサーバーは、IT セキュリティ ポリシーや企業の規制の要件に準拠して構成できません。また、独自サーバーを展開した場合、サーバーのバックアップが正しくできず、ソフトウェアのパッチや更新を常に最新の状態に保てません。さらに、SharePoint サービスによって管理されていないサーバー上のコンテンツは、企業のインデックス サービスによってクロールされず、分離されたコンテンツ ポケットが作成されます。
複数のサービスの作成
提供する一連のサービスは、Office SharePoint Server をサポートする必要があります。たとえば、 グループ作業のために何千ものサイトを提供するサービスや、企業ポータルのようにミッションクリティカルな非常に大きいサイトをサポートするサービスです。一連の Office SharePoint Server サービスでは、各種サービス レベルで固有のガバナンス ルールやポリシーを適用できます。サービスのその他の利点として、評価するコストを組織のサービス レベルに応じて変更できます。また、サービスは階層構造のため、管理可能な方法で段階的に導入できます。
SharePoint サービスの管理対象
Office SharePoint Server をサポートする IT サービスを設計するとき、ガバナンス グループは、サービスの以下の要素をコントロールする制限とポリシーを決定する必要があります。
クォータ テンプレート
クォータ テンプレートは、サイト コレクションで格納できるデータ量を指定する数値から成ります。この数値は、サイト コレクションの管理者への電子メール通知をトリガする限界値でもあります。各種サービス レベルで提供されるサイトにクォータを関連付け、貴社の Office SharePoint Server の拡張を管理することもできます。また、各サービスで利用可能なアップロード ファイルの最大サイズに上限を設定することもできます。
Self-service の準備
ユーザーは IT ホスト ページを訪問してサイトの用途に関するデータを入力すれば、独自のトップレベル Web サイトを作成できます。サイトはカスタム ワークフローに応じて準備できます。サービスの各種レベルに応じて、そのサイトのサイズと有効期間を管理できます。
カスタマイズ ポリシー
Office SharePoint Server に準拠したサイトを使用する主な利点は、サイトをカスタマイズするサイト所有者用の機能の拡張です。たとえば、サイト所有者は、サイトの外観を変更したり、カスタム Web パーツやワークフローなど、新しい機能を装備したりできます。各サービス レベルで許容され、サポートされるカスタマイズの分量に十分注意してください。というのも、一部のタイプのカスタマイズはサーバー ファームに対してグローバルであるからです。たとえば、Self-Service Site Creation に対応可能なサービスには、1 つの Web アプリケーションを共有する何千ものサイトが含まれます。この場合はカスタマイズを、ユーザー インターフェイスでサポートされたもの (Web パーツをページに追加するなど) に限定できます。サーバー ファームを仮想的または物理的に分離するサービスでは、企業ポータル サイトの場合のように、カスタム イベント ハンドラやワークフローなど、広範なカスタマイズが適用できます。Office SharePoint Server 2007 によってサポートされるカスタマイズの範囲、各種サービス レベルで各タイプのカスタマイズをサポートするリスクと利点の詳細については、ホワイト ペーパー「SharePoint 製品とテクノロジのカスタマイズ ポリシー」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=92311&clcid=0x411) を参照してください。
資産の分類
情報の価値を組織の視点から識別する貴社のサービスによってサポートされたサイトとコンテンツの分類システムを開発し、実装できます。たとえば、メタデータを使用すれば、コンテンツのビジネス価値を高、中、低に分類できます。分類すれば、他の動作が誘発されます。たとえば、価値の高いコンテンツだけを暗号化して転送する、あるいは、影響力が中程度のコンテンツについて社外向け Web サイトで公開する前に承認プロセスを実行するという要求が発生します。
ライフサイクル管理
貴社のサービスでは、アクティブなサイトや使用されていないサイトに、ライフサイクルのガイダンスまたはツールを提供する必要があります。低レベルのサービスの場合、たとえば、サイト所有者が作成するサイトは 6 か月だけ継続し、その後はユーザーがサイトに対する要求を拡張しなければならない仕組みを実装できます。また、一定期間使用されていないサイトを、探し出して削除するツールを実装することもできます。ライフサイクル管理とは、組織内部におけるサービスとレコード管理ツールおよびプロセスとの統合でもあります。詳細については、「レコード管理を計画する」を参照してください。 IT 専門家向けの "MS IT Lifecycle management tool (MS IT ライフサイクル管理ツール)" を含む、一連のガバナンスや管理可能性のサンプルとツールについては、「Governance and manageability tools on CodePlex (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=114564&clcid=0x411) を参照してください。
ブランド設定とテンプレート
サイト テンプレートは、サイト定義で保存された一連のカスタマイズです (詳細については、「テンプレートおよび定義を使用する」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=119099&clcid=0x411) 参照してください)。どのサイト テンプレートを利用可能にするかは選択できます。これは特に低レベルのサービスの場合、サイト所有者がサイトをあまりカスタマイズできないので役に立ちます。サイト テンプレートを利用することで、サイトの目的を明確にして、それと貴社を関連付けるブランド設定や他の要素を提供します。
データ保護
データ保護を提供する機能には、バックアップと復元が含まれます。提供するデータ保護のレベルは、提供するサービス レベルに応じて変更できます (高レベルの場合はサイト所有者に要求する必要があります)。サービス レベルごとに、サイトをバックアップする頻度とサイトの復元について保証する応答時間を計画します。詳細については、「データ保護と復元を計画する (Office SharePoint Server)」を参照してください。
トレーニング
経験豊富なユーザー コミュニティは IT に恩恵をもたらします。そのおかけでサポート コールが減少し、サービスの採用が促進され、Office SharePoint Server の正しい使用法が確認でき、Office SharePoint Server サービスを利用する場合の責任についてユーザーから理解が得られやすくなります。サービスのレベルに応じて、適切なレベルのトレーニングが必要なことに注意してください。基本サービスの場合も、サイト管理権限をもつユーザーであれば、サイトの機能に影響を及ぼす多数の機能にアクセスします。このようなユーザーがサイトを最大限に活用するには、チュートリアルなどのオンライン トレーニングが役立ちます。
複数のサービスの作成
貴社の Office SharePoint Server サービスのユーザーには、次のような目的に適合したサイトが必要になります。
イベントを計画するための短期的な専用ワークスペース
一般的なグループ作業のためのチーム サイト
大規模なワークグループがビジネス プロセスを管理するための部門ポータル
情報をブロードキャストし、組織全体にサービスを供給するための企業ポータル
Office SharePoint Server貴社のサービスを、社内のニーズに適合する一連のサービスに分割することを検討してください。同じサービスのユーザーであれば、同じレベルのサポートが得られ、ほぼ同じコストを負担するようにします。複雑なソリューションや費用のかかるソリューションが必要であれば、新しいサービスを追加すれば対応できます。このアプローチの利点は、1 度に 1 つのサービスを導入できることです。これによって、貴社の IT スタッフの負担は軽減します。関係役員、事業部門のリーダー、IT マネージャと協力し、各レベルのサービスの要件と各サービスの導入順序を決定します。
下表は、一連の階層型サービスを作成する手法の一例です。この例には、3 つのサービス レベルが記載されています。表内の数値は推奨値ではなく、例として記載したものです。
一連のサービスの作成例
基本サービス | 高度サービス | プレミアム サービス | |
---|---|---|---|
説明 |
何千もの顧客サイト コレクションをホストするためのサーバー ファーム 短期的なサイトを小規模なチーム サイトと一緒にサポートすることが目的です。 |
少数のポータル サイトをホストするためのサーバー ファーム サーバー側のカスタマイズが、同じサーバー上にホストされた他のサイトと干渉しない要件を満たす場合に適用できます。 |
高度にカスタマイズされた大規模サイトまたは非常に重要な大規模サイトをホストするための専用サーバー ファーム トポロジは、顧客とホスト チームとの間で同意されたホスト要件に応じて拡張できます。 |
例 |
イベントを計画するためのグループ作業サイト |
基幹業務データとカスタム ワークフローとの統合が組み込まれた部門ポータル |
複数のバックエンド システムとの大規模な統合が組み込まれた企業ポータル |
範囲 |
サイト コレクション |
Web アプリケーション |
複数の Web アプリケーションをもつサーバー ファーム |
カスタマイズ |
ユーザー インターフェイスで利用可能なカスタマイズだけがサポートされます。 |
カスタム サイト テンプレートなど、一部のサーバー側のカスタマイズがサポートされます。すべてのカスタマイズは、テストとレビューを受けた後に展開が認められます。 |
広範なカスタマイズが許可されます。 すべてのカスタマイズは、テストとレビューを受けた後に展開が認められます。 |
ユーザーのコスト |
0 または最小 |
中 |
高 |
Self-service の準備 |
あり |
なし |
なし |
コンテンツ ストレージの上限 |
500 MB |
2 GB |
無制限 |
バックアップの頻度 |
週 2 回 |
毎日 |
毎日 |
バックアップの保持期間 |
14 日 |
30 日 |
60 日 |
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