SharePoint サービスの確立と管理 (SharePoint Server 2010)

 

適用先: SharePoint Server 2010

トピックの最終更新日: 2017-01-20

Microsoft SharePoint Server 2010 展開の成功は、安全で管理可能なコスト効果の高い方法を使用して、サービスを管理し、サービスが顧客のビジネス ニーズを確実に満たすことができるようにする企業の能力に依存します。この記事には、SharePoint Server 2010 をホストする IT サービスの標準的な要素についての説明、SharePoint Server サービスの管理における主な成功要因の提案、および 3 層の SharePoint サービスの例が含まれます。

  • SharePoint サービスとは

  • 成功するサービスの要素

  • SharePoint サービスで何を管理するか

  • 複数のサービスの作成

  • サービス レベル アグリーメント

SharePoint サービスとは

SharePoint サービスとは、Microsoft SharePoint 2010 製品 に基づいてホストされているサイトを提供する IT サービスです。サービスは次のような機能を提供します。

  • サイト コレクション、Web アプリケーション、サーバー ファームなど、ある範囲のサイト

  • バックアップと復元

  • コンテンツの保存

  • カスタマイズのサポート

  • セキュリティ

  • 速度や可用性に基づくサービス レベル

成功するサービスの要素

SharePoint Server サービスの計画および実装を行う場合、以下の要素について検討します。これらの要素は、管理作業の成功に貢献する可能性があります。

  • 管理グループを形成して使用する

    SharePoint Server をサポートする IT サービスは、上級管理者、業務部門のリーダー、影響力のあるインフォメーション ワーカー、IT 管理者、IT 技術専門家などを含むグループによって管理される必要があります。この管理グループの目標は、サービスを監督することです。管理グループは、その職務において、サービスで提供される当初の機能およびサービスの継続ポリシーを定義し、会議を定期的に開いて成功を評価します。

  • サービスについて話し合う

    策定するガバナンス ポリシーは、企業内に公開する必要があります。サービスのセットを表す Web サイトを保守します。

  • サービスの使用を促進する

    ユーザーが独自のサーバーを展開することを防止または禁止します。代わりに、ユーザーがサービスを使用することを奨励します。IT セキュリティ ポリシーおよび企業の規制要件に従って、分離されたサーバーを構成することはできません。また、独自のサーバーを展開するユーザーは、そのサーバーを適切にバックアップすることや、ソフトウェアの修正プログラムや更新プログラムを使用してサーバーを最新状態に維持することができなくなる場合があります。サービスによって管理されないサーバーのコンテンツは、企業のインデックス サービスによってクロールされない場合があり、コンテンツの孤立したポケットが作成される場合があります。

  • 複数のサービスを作成する

    SharePoint Server をサポートするサービスのセットを提供する必要があります。たとえば、1 つのサービスでグループ作業用の数千のサイトを提供し、別のサイトで非常に大規模のミッション クリティカルなサイト (企業のイントラネット サイトなど) をサポートできます。SharePoint Server サービスのセットを使用することで、サービスのさまざまなレベルで独自のガバナンス ルールとポリシーを適用できるため、各組織のサービス レベルに基づいて、組織ごとに異なる費用を評価できます。最後に、階層化されたサービスを使用することで、管理可能な方法でサービスを段階的に導入できます。

SharePoint サービスで何を管理するか

SharePoint Server をサポートする IT サービスを設計する場合、管理グループはサービスを制御するための制限とポリシーを決定する必要があります。SharePoint Server でマルチテナント機能を使用してサービスをホストする場合、IT グループはサイト セットの共通の管理作業を業務部門のオーナーに委任できます。これにより、IT グループは、サービス自身に集中して取り組むことができます。マルチテナントの詳細については、「ホストされた環境 (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

サービスの次の要素について、制限とポリシーを決定します。

  • クォータ テンプレート

    クォータ テンプレートは、サイト コレクションに格納できるデータ量を指定する値で構成されます。また、サイト コレクション管理者に電子メール アラートを送信する際のトリガーとなる制限もこの値によって示されます。クォータを、さまざまなサービス レベルで提供されるサイトに関連付けて、企業内における SharePoint Server の成長を管理できます。サンドボックス ソリューションについては、独立したクォータを設定できます。

  • アップロードの最大サイズ

    Web アプリケーション レベルで、アップロードされるファイルの最大サイズに関する制限を設定できます。ホスト Web アプリケーション内のすべてのサイトで、同じ制限が使用されます。

  • サイトのライフサイクル管理

    セルフサービス サイトの管理およびサイトの使用確認と削除を使用して、サイトの作成方法、サイトのサイズ、サイトの有効期限を管理できます。また、有効期限ポリシーとアクセス ポリシーを設定して、サイト内のコンテンツのライフサイクルを制御できます。

    セルフサービス サイトの準備を使用すると、ユーザーは、IT がホストするページにアクセスし、サイトの使用目的に関するデータを指定することで、ユーザー独自の最上位レベルの Web サイトを作成できます。その後、カスタム ワークフローに基づいてサイトを準備できます。サービスのさまざまなレベルについて、このようなサイトのサイズを管理し、有効期限を制御できます。

  • カスタマイズ ポリシー

    SharePoint Server に基づくサイトを使用する第一のメリットは、サイトの所有者がサイトをカスタマイズできることです。たとえば、サイトの所有者は、サイトの外観を変更したり、カスタム Web パーツ、ワークフローなど、新しい機能を提供したりできます。一部の種類のカスタマイズはサーバー ファームにグローバルに適用されるため、サービスの各レベルで許可およびサポートされるカスタマイズの種類と量について慎重に検討します。

    サンドボックス ソリューションを使用して、ファーム内におけるカスタマイズの影響を制限することを検討します。たとえば、セルフサービス サイトの作成が許可されるサービスには、1 つの Web アプリケーションを共有する数千のサイトが含まれる場合があります。このような場合、ページへの Web パーツの追加など、ユーザー インターフェイスによってサポートされるサイトのみにカスタマイズを制限できます。サンドボックス ソリューションを使用する場合、カスタマイズはそのサイト コレクションのみに適用されます。サーバー ファームの仮想的または物理的な分離を提供するサービス (企業のイントラネット サイト用のサービスなど) では、カスタム イベント ハンドラー、カスタム ワークフローなど、広範囲のカスタマイズを許可できます。

    Web アプリケーション レベルでは、SharePoint Designer を使用してその Web アプリケーションでサイトを変更できるかどうかを制御することもできます。詳細については、「Web アプリケーションの設定を構成する (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

    SharePoint Server 2010 がサポートするカスタマイズの範囲の詳細、およびサービスのさまざまなレベルでカスタマイズの各種類をサポートすることのリスクと利点については、白書「SharePoint 製品とテクノロジのカスタマイズ ポリシー」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=92311&clcid=0x411) を参照してください。この白書の内容は、特に Microsoft Office SharePoint Server 2007 について書かれていますが、その情報の多くは SharePoint Server 2010 に適用されます。サンドボックス ソリューションの詳細については、「サンドボックス ソリューションを計画する (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

  • 資産の分類

    情報が組織に及ぼす影響および組織における情報の価値を特定する、サービスによってサポートされるサイトとコンテンツの分類システムを開発して実装できます。たとえば、メタデータによってコンテンツを分類できます。コンテンツは、ビジネスに及ぼす影響またはビジネス価値の程度 (高、中、低) で分類されます。

    • 影響は露出とコンテンツに関連します。コンテンツが外部に配信された場合、ビジネスに損害が生じますか? また、コンテンツは、ユーザーまたは顧客についての個人を特定できる情報を公開しますか? そのような場合、コンテンツは、ビジネスに及ぼす影響度が高いコンテンツです。

    • 価値は可用性に関連します。コンテンツが利用できない場合、企業の日常業務に影響する可能性がありますか? そのようなコンテンツは、価値が高いコンテンツです。

    次に、各分類によって他の動作が生じます。たとえば、ビジネスに及ぼす影響度の高いコンテンツは、暗号化された形式でのみ転送される必要があります。また、影響度が中のコンテンツについては、誰もが利用できる Web サイトに公開される前に、承認プロセスが実行される必要があります。おそらく、ビジネスに及ぼす影響度の高いコンテンツは、制限が厳しいポリシーおよび積極的な障害復旧プロセスを提供するサービス上でホストされる必要があります。

  • ライフサイクル管理

    サービスでは、使用中のサイトおよび未使用のサイトのライフサイクル ガイドラインまたはツールが提供される必要があります。たとえば、サービス レベルが低い場合、6 か月継続するサイトをサイトの所有者のみが作成できるメカニズムを実装できます。6 か月経過後に、ユーザーはそのサイトの要求を延長する必要があります。また、指定した期間使用されなかったサイトを探して削除するツールを実装することもできます。ライフサイクル管理は、サービスを、組織に配備されたレコード管理ツールおよびプロセスと統合することも意味します。詳細については、「レコード管理の計画 (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

  • ブランド化とナビゲーション

    企業のスタイル ガイドに従って一貫したブランド化を図ることで、一体感のあるサイトが作成され、開発が容易になります。マスター ページとテンプレートを使用することで、サイトの視覚的なブランドを容易に作成できます。承認されたマスター ページは、サイト デザイナーがそのマスター ページを一貫して使用できるようにサイト ギャラリーに保管します。デザインが一貫していることで、ユーザーは、サイトを閲覧するときに自分が適切な場所にいることを確認できます。サイトの所有者が変更できるおよび変更できないテンプレートのパーツを定義します。個々のチームまたはプロジェクトのブランドのサブブランド化を図るための場所を確保しておきます。

    ユーザーがコンテンツを検索するサービスを操作するときに道に迷わないようにするには、一貫したナビゲーションも重要になります。

  • データ保護

    データ保護を提供する機能としてバックアップと復元があります。データ保護のレベルは、提供するサービス レベルに基づいて変えることができます。レベルが高くなると、サイトの所有者に料金を請求することが必要になる場合があります。サービスの各レベルにおいて、サイトのバックアップを作成する頻度、および保証される、サイトの復元にかかる応答時間を計画します。詳細については、「SharePoint Server 2010 でのバックアップと復元を計画する」および「Business Continuity Management Resource Center (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199235&clcid=0x411) (英語) を参照してください。

  • セキュリティ、インフラストラクチャ、および Web アプリケーションのポリシー

    インフラストラクチャを保守し、インフラストラクチャとコンテンツへのアクセスを監視して、セキュリティで保護された安定した環境を維持します。Web アプリケーション ポリシーを使用し、法令遵守規則または業務ニーズに従って、コンテンツへのアクセスを許可または拒否します。ソフトウェア更新プログラムを使用してインフラストラクチャを最新に維持し、最新の機能向上と修正プログラムが常に適用されている状態にします。

  • トレーニング

    十分なトレーニングを受けたユーザー コミュニティは IT に利益をもたらします。サポートへの問い合わせが減少し、導入が促進され、SharePoint Server が適切に使用されるようになり、SharePoint Server サービスを使用するときにユーザーが自分の責務を容易に理解できるようになります。サービスの各レベルで、要件として必要とされるトレーニングの適切なレベルについて検討します。基本サービスの場合でも、サイト管理者のアクセス許可を持つユーザーは、サイトの機能に影響する多くの機能にアクセスできます。このようなユーザーは、このユーザー向けのオンライン トレーニング (チュートリアルなど) を受講することで、サイトのメリットを最大限に生かすことができます。

    ユーザー コミュニティ向けのトレーニングを受講するには、「エンド ユーザー向け SharePoint 2010 リソース」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199542&clcid=0x411) にアクセスしてください。

複数のサービスの作成

企業の SharePoint Server サービスのユーザーは、さまざまな目的を満たすサイトを必要とします。

  • 存続期間の短い専用のワークスペース。イベントの計画や、会議やプロジェクトの管理を行います

  • チーム サイト。一般的なグループ作業を行います

  • 大規模ワークグループ向けの部門ポータル。部門のビジネス プロセスを管理します

  • 企業のイントラネット サイト。組織全体に情報を配信し、サービスを提供します

SharePoint Server サービスを、企業のさまざまなニーズを満たすサービスのセットに分割することを検討します。特定のサービスの各ユーザーは、同じレベルのサポートを受け、同様の費用を請求されます。より複雑なソリューションまたはより高価なソリューションが必要になるにつれ、そのソリューションをサポートする新しいサービスを追加できます。この手法の 1 つのメリットは、サービスを 1 つずつ導入できることです。これにより、IT スタッフの負担が軽減されます。上級管理者、業務部門のリーダー、および IT 管理者と連携して、サービスの各レベルの要件、およびサービスの導入順序を決定します。

次の表に、階層化されたサービス セットの作成方法を示す例を示します。この例では、3 つのサービス レベルが提供されます。ここに指定された値は推奨値ではなく、サンプル値です。

サービス セットの手法の例

基本サービス 拡張サービス プレミアム サービス

説明

数万の顧客サイト コレクションをホストするために使用するサーバー ファーム。

存続期間の短いサイトおよび小規模チームのサイトをサポートすることを目的とします。

少数のポータル サイトをホストするように設計されたサーバー ファーム。

サーバー側のカスタマイズ (ただし、同じサーバー上でホストされる他のサイトに影響しないカスタマイズ) に関するいくつかの要件を持つ顧客に適用できます。

高度にカスタマイズされたまたは非常に重要な大規模サイトをホストするためのサーバー ファーム。

顧客とホスト チーム間で合意されたホスト要件によっては、トポロジを拡張できます。

イベントを計画するためのグループ作業サイト

基幹業務データおよびカスタム ワークフローとの統合を含む部門ポータル

複数のバックエンド ステムとの大規模統合を含む企業イントラネット サイト

範囲

サイト コレクション

Web アプリケーション

複数の Web アプリケーションを含むサーバー ファーム

カスタマイズ

ユーザー インターフェイス内に加えることができるカスタマイズのみがサポートされます。

カスタム サイト テンプレートなど、サーバー側の一部のカスタマイズがサポートされます。すべてのカスタマイズは、それらの展開が承認される前にテストとレビューが行われます。または、カスタマイズはサンドボックス ソリューションとしてのみ許可されます。

大規模なカスタマイズが許可されます。すべてのカスタマイズは、それらの展開が承認される前にテストとレビューが行われます。または、カスタマイズはサンドボックス ソリューションとしてのみ許可されます。

ユーザーの費用

費用なし、または最少

セルフサービスの準備?

はい

いいえ

いいえ

コンテンツの保存容量制限

500 MB

2 GB

無制限

バックアップ頻度

週に 2 回

毎日

毎日

バックアップの保持期間

14 日

30 日

60 日

サービス レベル アグリーメント

サービス レベルごとにサービス レベル アグリーメントを確立します。サービス レベル アグリーメントには少なくとも以下の項目を含める必要があります。

  • サイトの作成に必要な期間と承認。

    サイトを作成するためのプロセス。関係する人。

  • ユーザーまたは部門にかかるサービスの費用に関する情報。

    費用の請求先と、費用項目。

  • 運用を実行するチームおよび頻度を指定する運用レベルの合意。

    更新プログラムを適用するチーム。バックアップを実行するチーム。これらの処理を行う頻度。

  • ヘルプ デスクによる問題解決に関するポリシー。

    ユーザーからの問い合わせの担当者。エスカレーション パス。

  • サイトの最初の読み込み、2 回目以降の読み込み、およびリモート場所のパフォーマンスに関して協議されたパフォーマンス目標。

  • 復元、負荷分散、およびフェールオーバーの戦略。

  • サービスのカスタマイズ ポリシー。

  • コンテンツとサイトの保存容量制限。

  • 複数言語サポート。

    インストールおよびサポートされる言語。

See Also

Concepts

SharePoint Server 2010 のインストールを追跡またはブロックする

Other Resources

Governance in SharePoint Server 2010 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=200590&clcid=0x411) (英語)
SharePoint - Sample Service Level Agreement (SLA) - "From the Field" blog (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=203973&clcid=0x411) (英語)
サンプル テンプレート : SharePoint ガバナンス計画 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=162169&clcid=0x411)