SharePoint Server 2010 での Excel Services のパフォーマンスと容量の要件を見積もる

 

適用先: SharePoint Server 2010

トピックの最終更新日: 2015-03-09

この記事では、Microsoft SharePoint Server 2010 の Excel Services を使用した場合、Microsoft SharePoint Server 2010 が実行されているトポロジにどのような影響があるかについて説明します。この情報を使用して、待機時間とスループットの要件に基づいて展開を調整することができます。

注意

この記事で示す特定の処理能力とパフォーマンスの数値は、現実の環境における数値とは異なっている点に注意することが重要です。ここで示す数値は、ある一定規模の環境を設計する際の出発点を提供することを目的としています。最初のシステム設計が終了したら、実際の環境のニーズにシステムが対応できるかどうかを判断するために構成をテストしてください。

この記事の内容:

  • テスト ファームの諸特性

  • テスト結果

  • 推奨事項

SharePoint Server 2010 の容量を計画し、その計画を実行する方法の一般的な情報については、「SharePoint Server 2010 での容量管理と規模設定」を参照してください。

テスト ファームの諸特性

このセクションでは、Excel Services のパフォーマンスおよび容量のテスト中に使用されたデータセット、ワークロード、ハードウェア設定、トポロジ、およびテスト定義について説明します。

データセット

Excel Services の容量とパフォーマンスは、サービスでホストされているブックの構成に大きく依存します。最も大きな影響を与えるのはブックのサイズと計算の複雑さです。ここでは、代表的なサイズと複雑さのブックのテストを実行していますが、ブックはどれも一つ一つ違っているので、実際の容量とパフォーマンスは、実際に使用しているブックとそのサイズおよび複雑さによって異なります。

容量プロファイルを評価するにあたり、Excel 専用のファームで Excel ブックをシミュレートしました。容量プロファイルのテスト中、SharePoint Server 以外のテストは実行されていません。また、ファームでは、ブックのサイズと複雑さに基づいて、小さなブック、大きなブック、非常に大きなブックの 3 つのグループを使用しました。

ブックの特性 小さい 大きい 非常に大きい

シート数

1 ~ 3

1 ~ 5

1 ~ 20

10 ~ 20

10 ~ 500

10 ~ 1,000

10 ~ 40

10 ~ 10,000

100 ~ 30,000

計算セル

0 ~ 20%

0 ~ 70%

0 ~ 70%

書式の数

1 ~ 10

1 ~ 15

1 ~ 20

0 ~ 1

0 ~ 2

0 ~ 5

グラフ

0 ~ 1

0 ~ 4

0 ~ 4

外部データを使用しているブック

0%

20%

50%

ピボットテーブルを使用しているブック

0%

3%

3%

条件付き書式を使用しているブック

0%

10%

20%

このテスト ファームのサイト数は 2,000 SharePoint Server サイトで、各サイトには、小さなブック、大きなブック、非常に大きなブックが 1 つずつ含まれています。SharePoint Server ページに配布されるブックの割合は、小さなブックでは 10%、大きなブックと非常に大きなブックでは 90% です。さらに、テスト ファームのデータセットには、1 ~ 5 個の Excel Web パーツが含まれる SharePoint Server ページがあります。

ワークロード

アプリケーションの使用をシミュレートするために、次の操作を 1 つ以上実行するためのワークロードが作成されました。

操作ミックス 小さなブック 大きなブック

表示

50%

70%

編集

35%

15%

共同表示

10%

10%

共同編集

5%

5%

さらに、ブック全体の 17% に外部データが含まれています。外部データを含む大きなブックと非常に大きなブックについては、更新が行われていた時間は全体の 80% です。小さなブックには外部データは含まれていません。

各ワークロードには、ユーザー操作間に 10 秒の思考時間が含まれます。思考時間は、ユーザーが操作を実行するのにどのくらいの時間がかかる可能性があるかをシミュレートするユーザー操作の遅延を表しています。これは、他の SharePoint Server 2010 の容量計画ドキュメントとは異なります。Excel Services はステートフルで、ブックはユーザー操作間でメモリに保持されます。このため、個別の要求だけでなくユーザー セッション全体をシミュレートすることが重要です。1 つのユーザー ワークロードに対する 1 秒あたりの平均要求数は 0.2 個です。

2,000 サイトの中の 1 つをランダムに選択し、ワークロードごとにテストを実行しました。次の表に、サイト内で選択したアプリケーションおよびアプリケーション サイズのパーセンテージを示します。

選択したブック 使用率

小さなブック

30%

大きなブック

55%

ダッシュボード

10%

非常に大きなブック

5%

グリーン ゾーンとレッド ゾーンの定義

スループット テストを実行する前に、構成ごとに 2 つのゾーンを定義しました。1 つはグリーン ゾーン、もう 1 つはレッド ゾーンです。グリーン ゾーンはスループットを維持できる推奨ゾーンです。レッド ゾーンは、スループットが短時間だけ許容される最大ゾーンです。このゾーンは避けることをお勧めします。

レッド ゾーンとグリーン ゾーンのユーザー ロードを判断するために、最初に手順のテストを実行して、次の条件を満たした時点でそのテストを停止しました。

  • グリーン ゾーン   ファーム (Web フロントエンド、Excel Calculation Services、または Microsoft SQL Server) 内の任意のコンピューターの CPU 使用率が 50% を超えるか、システム全体の応答時間が 1 秒を超えた時点で停止しました。

  • レッド ゾーン   ファーム内の Excel Calculation Services コンピューターで成功した RPS が最大になった時点で停止しました。このポイントを超えると、ファームの全体的なスループットの低下が始まります。また、層の 1 つではエラーが発生し始める場合があります。スループットがレッド ゾーンに入ると、多くの場合、Excel Calculation Services の最大プライベート バイトを超えることになります。

手順テストの実行後、これらの最大値を再度処理することで、さらに長い 1 時間の一定のロード テストを実行しました。ロードが 75% になった時点でグリーン ゾーン テストを停止しました。レッド ゾーン手順テストでは、65% のロードを使用した時点でピークに達しました。グリーン ゾーン テストがメモリによって制限され、CPU 使用率が 50% を超えない場合は、代わりにレッド ゾーンに対して計算された 75% のロードの値を使用しました。

グリーン ゾーンとレッド ゾーンの両方について、またスケールアウトとスケールアップの両方のテストについて、平均応答時間は 0.25 秒を下回りました。

ハードウェアの設定とトポロジ

このセクションでは、ラボで使用したコンピューター ハードウェアの種類、およびテストで使用したファーム構成トポロジについて説明します。

ラボのハードウェア

テスト結果の詳細を高いレベルで提供できるように、テストでは複数のファーム構成を使用しました。具体的には、1 ~ 3 台の Web フロントエンド サーバー、Excel Services および Excel Calculation Services 用の 1 ~ 3 台のアプリケーション サーバー、および Microsoft SQL Server 2008 が実行されている 1 台のデータベース サーバーコンピューターでファームを構成しました。また、テストで使用したクライアント コンピューターの数は 4 台です。すべてのサーバーが 64 ビットで、クライアント コンピューターは 32 ビットでした。

次の表は、テストで使用したハードウェアを示しています。

コンピューターのロール CPU メモリ ネットワーク

Web フロントエンド サーバー

2 台のプロセッサ/4 コア 2.33 GHz Intel Xeon

8 GB

1 ギガ

Excel Calculation Services

2 台のプロセッサ/4 コア 2.33 GHz Intel Xeon

8 GB

1 ギガ

SQL Server

4 台のプロセッサ/4 コア 2.6 GHz Intel Xeon

16 GB

1 ギガ

トポロジ

テストでは Excel Calculation Services 層のメモリと Web フロントエンド サーバー層の CPU が、スループットの最も重要な制限要因になっていることを示しています。ユーザーによってテスト方法が異なる場合があることに注意してください。したがって、スケールアウト テストでは両方の層におけるコンピューター サーバーの数に変化を持たせました。

スケールアップ テストでは、Excel Calculation Services と Web フロントエンド サーバーについては 1:1 のトポロジを展開し、Excel Calculation Services コンピューターのプロセッサ数と使用可能なメモリに変化を持たせました。

SharePoint Server 2010 を実行している SQL Server インスタンスでは、Excel Calculation Services の要求は特に厳しいというわけではありません。ブックは SharePoint Server 2010 から読み取られるバイナリ ラージ オブジェクト (BLOB) で、Excel Calculation Services 層でメモリに入れられるからです (さらに、ディスクにキャッシュされます)。SQL Server がボトルネックになることは決してありませんでした。すべてのテストで、ボトルネックはファームの特定のコンポーネントの容量が限界に達している状態として定義されています。

テスト結果

以下の表は、Microsoft SharePoint Server 2010 の Excel Services のテスト結果を示しています。テストのグループごとに、特定の変数だけを変えているので、ファームのパフォーマンスに対する漸進的な影響がわかります。

この記事に示されているテストはすべて、実行時に思考時間と待機時間が考慮されていることに注意してください (思考時間としてはユーザー操作間に 10 秒が確保されています)。これは、SharePoint Server 2010 の他の部分の容量計画の結果とは異なります。

Excel Services のボトルネックについては、この記事の「一般的なボトルネックとその原因」セクションを参照してください。

全体的なスケール

次の表は、追加の Web フロントエンドおよび専用 Excel Calculation Services コンピューターをファームに追加した結果を示しています。このスループットの数値は Excel Calculation Services コンピューター専用です。つまり、ファーム全体への影響は反映されていません。

トポロジ ベースラインの最大値 (RPS) 推奨ベースライン (RPS)

1x1

38

31

1x2

35

26

1x3

28

21

2x1

57

35

2x2

62

46

2x3

52

39

3x1

51

32

3x2

81

69

3x3

83

64

最大および推奨される RPS を示す図

推奨結果

次の図は、推奨の持続できるスループットの結果を示しています。

ECS サーバーの追加時のスループットを示す図

この図は、Web フロントエンド コンピューターをファームに追加する際にオーバーヘッドが発生することを示しています。ただし、このオーバーヘッドは、Excel Calculation Services コンピューターが追加されることで相殺されます。Excel Calculation Services コンピューターを 2 台追加すると、1 台の Web フロントエンドがボトルネックになりました。2 台目と 3 台目の Excel Calculation Services コンピューターを追加することで容量が増加するのに、この Web フロントエンドがボトルネックになるため、容量増加のメリットがなくなってしまいます。さらに、Excel Calculation Services コンピューターが制限要因になると、Web フロントエンド コンピューターが 3 台でも、スループットが全く追加されていないことにも注目してください。

CPU 使用率の WFE パーセントを示す図

この図では、Web フロントエンド コンピューターが追加されているので、各コンピューターの CPU ロードが大幅に軽減されていることに注目してください。また、2 台の Web フロントエンド サーバーと 3 台の Excel Calculation Services コンピューターにより、1 台の Web フロントエンド コンピューターで示された CPU ロードの最大値に達していることにも注意してください。これは、Excel Calculation Services コンピューターを追加すると、Web フロントエンド層が制限要因になることを示しています。この結果は "推奨" ロードに対するものであることに注意してください。CPU ロードが、高いレベルではなく 35% で最大に達しているのはこのためです。

最大結果

次の図は、最大ピーク スループットの結果を示しています。

ECS PC の追加時の最大スループットを示す図

推奨結果と同様に、2 台目と 3 台目の Excel Calculation Services コンピューターを追加したので、1 台の Web フロントエンド コンピューターが制限要因になっていることがわかります。また、推奨結果と全く同じように、2 台目の Web フロントエンド コンピューターが追加された後は、Excel Calculation Services が制限要因になるので、3 台目の Web フロントエンド コンピューターを追加してもスループットは向上していないことにも注目してください。

WFE パーセントと CPU 最大使用率を示す図

この図の結果は、複数の Web フロントエンド コンピューターには、1 台の Web フロントエンド コンピューター構成ほど高いロードがかからないことを示しています。これは、2 台目の Web フロントエンド コンピューターが追加された後は Excel Calculation Services コンピューターがボトルネックになることを示します。

結果の詳細

このセクションでは、テストで取得した推奨結果と最大結果の詳細情報を示します。

推奨結果

以下の表は、テストの推奨結果を示しています。

全体 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

クライアントの成功した RPS

30.56

34.55

31.67

26.03

45.94

68.37

20.71

38.82

63.70

クライアントの応答時間 (秒)

0.22

0.18

0.19

0.16

0.19

0.20

0.15

0.15

0.17

TPS

1.58

1.77

1.61

1.40

2.38

3.54

1.08

2.03

3.25

Web フロントエンド層 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

% CPU (すべての Web フロントエンド コンピューターの平均値)

33.73

37.64

33.84

14.61

23.95

36.90

7.54

13.12

21.75

Excel Calculation Services 層 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

% CPU (すべての Excel Calculation Services コンピューターの平均値)

30.56

34.55

31.67

26.03

45.94

68.37

20.71

38.82

63.70

プライベート バイトのピーク値 (すべての Excel Calculation Services コンピューターの最大値)

5.94E+09

5.82E+09

5.79E+09

5.87E+09

6.09E+09

5.92E+09

5.79E+09

5.91E+09

5.85E+09

最大結果

以下の表は、テストの最大結果を示しています。

全体 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

クライアントの成功した RPS

37.85

56.70

51.17

35.19

62.04

81.31

27.79

51.62

82.58

クライアントの応答時間 (秒)

0.19

0.28

0.23

0.16

0.20

0.25

0.16

0.16

0.22

TPS

1.92

2.96

2.59

1.81

3.21

4.60

1.41

2.72

4.30

Web フロントエンド層 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

% CPU (すべての Web フロントエンド コンピューターの平均値)

41.08

67.78

58.59

19.44

34.11

45.97

10.19

17.79

28.69

Excel Calculation Services 層 1x1 1x2 1x3 2x1 2x2 2x3 3x1 3x2 3x3

% CPU (すべての Excel Calculation Services コンピューターの平均値)

24.99

18.44

10.96

23.57

20.56

17.77

18.97

17.04

18.10

プライベート バイトのピーク値 (すべての Excel Calculation Services コンピューターの最大値)

5.91E+09

5.85E+09

5.91E+09

5.88E+09

5.99E+09

6.502E+09

5.94E+09

5.94E+09

6.04E+09

スケール アップ テストの結果

また、Excel Calculation Services に CPU とメモリを追加することで得られる効果も測定しました。このテストでは、1x1 トポロジが使用されています。

CPU を ECS に追加したときの影響を示す図

この図の結果は、CPU を追加することである程度の効果は得られますが、全体的なスループットには大きな影響がないことを示しています。

RAM を ECS に追加したときの影響を示す図

ただし、この図のレッド ゾーンは、メモリの追加が特にピーク時間のスループットに大きな影響を及ぼすことを示しています。このテストでは、全体を通して同じハードウェアが使用されましたが、Excel Services プロセスのプライベート バイトの最大サイズは制限されていました。ブックはメモリ内に維持されているので、ブックのサイズは、Excel Calculation Services コンピューターがサポートできるブック数とユーザー数に大きな影響を及ぼします。

推奨事項

このセクションでは、ハードウェア、Excel Services 設定、一般的なボトルネック、およびトラブルシューティングに関する、パフォーマンスと容量の全般的な推奨事項について説明します。

Excel Services の容量とパフォーマンスは、サービスでホストされているブックの構成に大きく依存することに注意してください。最も大きな影響を与えるのはブックのサイズと計算の複雑さです。ここでは、代表的なサイズと複雑さのブックのテストを実行していますが、ブックはどれも一つ一つ違っているので、実際の容量とパフォーマンスは、使用するブックのサイズと複雑さによって異なります。

ハードウェアに関する推奨事項

Excel Services では、Web フロントエンド サーバーとアプリケーション サーバーの両方で通常のハードウェアが使用されており、特別な要件はありません。Excel Calculation Services 層のコンピューターには、CPU 数、速度、およびメモリに関する一般的な SharePoint Server 2010 ガイドラインを適用できます。Excel Calculation Services コンピューターで発生する可能性のある最初のボトルネックの 1 つがメモリで、これによりリソースの追加が必要になる可能性があることに注意してください。リソースを追加する前に、組織の代表的な一連のブックを使用してテストを行うことをお勧めします。ブックのサイズと複雑さは、メモリを追加することで増加する可能性がある容量に大きな影響を及ぼします。

開始点トポロジの容量を増やし、パフォーマンスを向上させる方法は 2 つあります。1 つは既存のサーバーの容量を増やしてスケール アップする方法で、もう 1 つは追加のサーバーをトポロジに追加してスケール アウトする方法です。このセクションでは、複数のスケール アウト トポロジの一般的なパフォーマンス特性について説明します。

サンプル トポロジでは、次の一般的な方法によって Excel Services シナリオのトポロジをスケール アウトします。

  • ユーザー ロードを増やす場合は、まず、既存の Excel Services アプリケーション サーバーの CPU とメモリを確認します。CPU に問題がない場合はメモリを追加し、メモリに問題がない場合は CPU を追加します。メモリと CPU の両方が上限に達している場合は、Excel Calculation Services コンピューターの追加が必要である可能性があります。Web フロントエンド サーバーがボトルネックになるまで Excel Calculation Services またはアプリケーション サーバーを追加し、その後、必要に応じて Web フロントエンド サーバーを追加します。

  • このテストでは SQL Server はボトルネックではありませんでした。ブックの読み取りと書き込みはドキュメント全体として行われ、ユーザー セッション中はブックがメモリに保持されるので、Excel Services によって、データベース層で大きな要求が発生することはありません。

パフォーマンス関連の Excel Services 設定

Excel Services パフォーマンス特性を制御する方法の 1 つに、メモリの使用方法を制御するというものがあります。以下の一覧の各グローバル設定を、[SharePoint Server 2010 サーバーの全体管理] > [アプリケーション構成の管理: サービス アプリケーションの管理] > [Excel Services アプリケーション] > [グローバル設定] から設定します。

  • プライベート バイトの最大サイズ  - 既定では、Excel Calculation Services が使用するメモリはコンピューター上のメモリの最大 50% です。コンピューターが他のサービスでも使用されている場合は、この数値を小さくすることをお勧めします。共有されていない Excel Calculation Services 専用のコンピューターで、かつメモリが制限要因になっている可能性がある場合、この数値は大きくするのが理にかなっています。どの場合でも、管理者がスケール アップを適切に行うには、この数値を調整して試しながら、必要な変更を加えていくようにします。

  • メモリ キャッシュのしきい値  - Excel Calculation Services では、未使用のオブジェクト (すべてのセッションがタイムアウトになっている読み取り専用ブックなど) はメモリにキャッシュされます。既定では、Excel Calculation Services は、[プライベート バイトの最大サイズ] の 90% をこの目的で使用します。サーバーが Excel Calculation Services の他にサービスをホストしている場合、この数値を小さくすると、全体的なパフォーマンスが向上する可能性があります。この数値を増やすと、要求されたブックが既にメモリにあり、SharePoint Server コンテンツ データベースから再ロードする必要がない可能性が高くなります。

  • 未使用オブジェクトの最大有効期間 - 既定では、Excel Calculation Services ではオブジェクトがメモリ キャッシュにできるだけ長く保持されます。Excel Calculation Services のメモリ使用量を減らすには、特に同じコンピューター内で他のサービスと共に実行されている場合は、メモリ内にオブジェクトをキャッシュする期間に制限を適用することをお勧めします。

ブックの最大サイズとセッションの利用期間を制御する設定もあります。これにより、ブックがメモリに保持される期間が制御されます。これらの設定は、信頼できる各場所に関連付けられており、グローバルではありません。これを設定するには、[SharePoint Server 2010 サーバーの全体管理] > [アプリケーション構成の管理: サービス アプリケーションの管理] > [Excel Services アプリケーション] > [信頼できる場所] に移動して、[信頼できるファイル保存場所の編集] ページの [ブックのプロパティ] セクションで、信頼できる各場所の設定を編集します。

  • ブックの最大サイズ

  • グラフまたはイメージの最大サイズ

既定では、Excel Calculation Services は 10 MB 以下のブックおよび 1 MB 以下のグラフ/イメージに制限されています。これよりも大きなブックやグラフ/イメージを使用すると、Excel Calculation Services 層のコンピューターの使用可能なメモリに負荷がかかるのは明らかです。ただし、組織内には、特定のブックを操作するために Excel Calculation Services のこれらの設定を大きくする必要があるユーザーが存在する可能性があります。

  • セッション タイムアウト - セッション タイムアウトの値を小さくすると、未使用オブジェクト キャッシュまたは他のサービスに対してメモリがすばやく使用可能になります。

  • 揮発性関数のキャッシュの有効期間 - 揮発性関数は、ブックを連続して再計算するたびに値を変更できる関数で、日付/時刻関数、乱数ジェネレーターなどがあります。これによりサーバー ロードがかかるので、Excel Calculation Services では、再計算のたびにこれらの値が再計算されることはありません。代わりに、最後の値が短時間だけキャッシュされます。この有効期間を長くすると、サーバー ロードが軽減される場合もありますが、これは揮発性関数を使用するブックがあるかどうかによって異なります。

  • 外部データの許可 - Excel Calculation Services では外部データ ソースを利用できますが、外部ソースを取り込むと、大量のデータが返される可能性があるので、この処理にはかなり時間がかかる可能性があります。外部データが許可されている場合は、この機能の影響を調整するのに役立つ追加設定をいくつか使用できます。

一般的なボトルネックとその原因

パフォーマンスのテスト中、さまざまな種類の一般的なボトルネックがいくつかわかってきました。ボトルネックはファームの特定のコンポーネントの容量が限界に達している状態として定義されています。これによりファームのスループットが停滞または低下します。

次の表で、いくつかの一般的なボトルネックを示し、その原因と、考えられる解決方法について説明します。

パフォーマンスとスケーラビリティのトラブルシューティング

ボトルネック 原因 解決方法

Excel Calculation Services メモリ

Excel Services では、ユーザーのセッションにわたって各ブックがメモリに保持されます。ブックの数が多いか、ブックのサイズが大きいと、使用可能なすべてのメモリが Excel Calculation Services によって使用される可能性があり、"プライベート バイト" の実際の消費量が "プライベート バイトの最大サイズ" を超えることがあります。

Excel Calculation Services 層のコンピューターのメモリを増やすことでスケール アップするか、Excel Calculation Services コンピューターを追加してスケール アウトします。どちらを選択するかは、CPU も上限に達しているかどうかに一部依存します。

Excel Calculation Services CPU

Excel Services では、ブックの数および複雑性によっては、アプリケーション層で大量の処理が実行される可能性があります。

既存の Excel Calculation Services コンピューターの CPU やコアの数を増やすか、Excel Calculation Services コンピューターを追加します。

Web サーバー CPU 使用率

Web サーバーがユーザー要求でオーバーロードになると、平均 CPU 使用率が 100% 近くになります。これにより、Web サーバーが要求にすぐに応答できなくなり、タイムアウトが発生してクライアント コンピューターにエラー メッセージが表示される場合があります。

この問題を解決する方法は 2 つあります。1 つは、Web サーバーをファームに追加してユーザー ロードを分散する方法で、もう 1 つは、より高速なプロセッサを追加して Web サーバーをスケール アップする方法です。

パフォーマンスの監視

システムをスケール アップまたはスケール アウトするタイミングを判断するには、パフォーマンス カウンターを使用してシステムの正常性を監視します。次の表の情報を使用して、監視するパフォーマンス カウンターと、そのパフォーマンス カウンターが適用されるプロセスを判断します。

フロントエンド Web サーバー

次の表は、ファーム内のフロントエンド Web サーバーを監視するためのパフォーマンス カウンターおよびプロセスを示しています。

パフォーマンス カウンター 対象のオブジェクト メモ

% Processor Time

Processor (w3wp)

このスレッドが手順を実行するためにプロセッサを使用した経過時間の比率を表します。

% Processor Time

Processor (_Total)

サーバー コンピューター上のすべてのスレッドが手順を実行するためにプロセッサを使用した経過時間の比率を表します。

Private Bytes

Process (w3wp)

この値が、w3wp プロセスに対して設定したプライベート バイトの最大サイズに近づかないようにします。近づいた場合は、メモリを使用しているコンポーネントを特定するために追加の調査が必要です。

Excel Calculation Services

次の表に、ファーム内のアプリケーション サーバー (この場合は Excel Calculation Services) を監視するためのパフォーマンス カウンターおよびプロセスを示します。

パフォーマンス カウンター 対象のオブジェクト メモ

% Processor Time

Processor (_Total)

サーバー上のすべてのスレッドが手順を実行するためにプロセッサを使用した経過時間の比率を表します。

% Processor Time

Processor (w3wp)

Excel Calculation Services は独自の w3wp プロセス内で実行されされるので、CPU 時間が大きくなったときにどの w3wp プロセスが原因かを簡単に特定できます。

Average Disk Queue Length

PhysicalDisk(_Total)

ログ記録のため、過剰な量のディスク書き込みを監視します。

Private Bytes

Process(w3wp)

Excel Services では、ユーザーのセッションの有効期限が終了するまで (構成可能なタイムアウト)、ブックがメモリにキャッシュされます。Excel Calculation Services を使用して大量のデータが処理されている場合は、Excel Calculation Services w3wp のメモリ消費量が増加します。

SQL Server

前に説明したように、ブックがユーザーのセッション中に Excel Calculation Services 層のメモリに読み込まれると、Excel Services は、SQL Server 層では軽くなります。SQL Server 層の監視とトラブルシューティングについては、SharePoint Server の一般的なガイドラインに従ってください。