論理レコードの競合の検出および解決

ここでは、論理レコードの使用時に利用できる、競合検出および競合解決方法のさまざまな組み合わせを紹介します。マージ レプリケーションでの競合は、複数のノードが同じデータを変更したとき、またはマージ レプリケーションが変更をレプリケートするときに制約違反などの特定の種類のエラーに遭遇したときに発生します。競合の検出および解決の詳細については、「マージ レプリケーションの競合検出および解決の詳細」を参照してください。

アーティクルに対して競合の追跡と競合解決のレベルを指定するには

競合検出

論理レコードの競合検出方法は、column_trackinglogical_record_level_conflict_detection の 2 つのアーティクル プロパティによって決定されます。以前のバージョンの SQL Server では、行レベルおよび列レベルの競合検出をサポートしていました。SQL Server 2005 では、論理レコード レベルの検出もサポートしています。行レベルの追跡と列レベルの追跡の詳細については、「マージ レプリケーションで競合を検出および解決する方法」の「追跡レベル」を参照してください。

logical_record_level_conflict_detection アーティクル プロパティは TRUE または FALSE のいずれかに設定できます。この値はトップ レベルの親アーティクルに対してのみ設定してください。子アーティクルでは無視されます。この値が FALSE の場合、マージ レプリケーションは以前のバージョンの SQL Server のように、アーティクルの column_tracking プロパティの値のみに基づいて、競合を検出します。この値が TRUE の場合、マージ レプリケーションはアーティクルの column_tracking プロパティを無視し、論理レコードのどこかで変更が行われた場合に競合を検出します。たとえば、次のシナリオについて考えてみます。

値を持つ 3 つのテーブルの論理レコード

CustomersOrders、または OrderItems テーブルの Customer2 論理レコードに対して 2 人のユーザーが値を変更した場合に競合が検出されます。この例では、UPDATE ステートメントにより変更が行われていますが、INSERT または DELETE ステートメントによる変更でも競合が検出されることがあります。

競合解決

既定では、マージ レプリケーションは優先度に基づくロジックを使用して競合を解決します。2 つのサブスクライバ データベースで競合する変更が行われた場合、サブスクリプションの優先度が高いサブスクライバ側の変更が優先されます。優先度が同じである場合は、パブリッシャに先に到達した変更が優先されます。行レベルおよび列レベルの検出では、優先度の低い行は常に優先される行全体で上書きされます。

logical_record_level_conflict_resolution アーティクル プロパティは TRUE または FALSE のどちらかに設定できます。この値はトップ レベルの親アーティクルに対してのみ設定してください。子アーティクルでは無視されます。この値が TRUE の場合、優先される論理レコード全体が優先度の低い論理レコードを上書きします。FALSE の場合、優先される個々の行は、別のサブスクライバまたはパブリッシャからのものである可能性があります。たとえば、Orders テーブルの行についてはサブスクライバ A が優先され、OrderItems テーブルの関連する行についてはサブスクライバ B が優先される、という場合があります。この結果、論理レコードの Orders 行はサブスクライバ A のものになり、OrderItems 行はサブスクライバ B のものとなります。

競合解決と検出の設定の相関関係

競合の結果は、競合の検出および解決の設定の相関関係によって異なります。次の例では、優先度に基づく競合解決法が使用されているものとします。論理レコードを使用する場合、以下のケースが考えられます。

  • 行レベルまたは列レベルの検出、行レベルの解決
  • 列レベルの検出、論理レコード レベルの解決
  • 行レベルの検出、論理レコード レベルの解決
  • 論理レコード レベルの検出、論理レコード レベルの解決

行レベルまたは列レベルの検出、行レベルの解決

この例では、パブリケーションは次のように構成されています。

  • column_tracking は TRUE または FALSE
  • logical_record_level_conflict_detection は FALSE
  • logical_record_level_conflict_resolution は FALSE

この場合、検出は行レベルまたは列レベルであり、解決は行レベルです。これらは、論理レコードに対するすべての変更を 1 つの単位としてレプリケートさせる利点を活かしながら、論理レコード レベルでの競合の検出または解決を行わないように設定されています。

列レベルの検出、論理レコード レベルの解決

この例では、パブリケーションは次のように構成されています。

  • column_tracking は TRUE
  • logical_record_level_conflict_detection は FALSE
  • logical_record_level_conflict_resolution は TRUE

パブリッシャとサブスクライバは同じデータセットから開始され、論理レコードは orders テーブルと customers テーブル間で定義されています。パブリッシャは customers テーブルの custcol1 列および orders テーブルの ordercol1 列を変更します。サブスクライバは customers テーブルの同じ行の custcol1 および orders テーブルの同じ行の ordercol2 列を変更します。customers テーブルの同じ列に対する変更で競合が発生しますが、orders テーブルへの変更では競合は発生しません。

競合は論理レコード レベルで解決されるため、レプリケーション処理中にパブリッシャ側で行われた変更が優先され、サブスクライバ テーブルの変更を置換します。

関連する行に対する変更を示す一連のテーブル

行レベルの検出、論理レコード レベルの解決

この例では、パブリケーションは次のように構成されています。

  • column_tracking は FALSE
  • logical_record_level_conflict_detection は FALSE
  • logical_record_level_conflict_resolution は TRUE

パブリッシャとサブスクライバは同じデータセットから開始します。パブリッシャは customers テーブルの custcol1 列を変更します。サブスクライバは customers テーブルの custcol2 列および orders テーブルの ordercol2 列を変更します。customers テーブルの同じ行に対する変更で競合が発生しますが、サブスクライバの orders テーブルへの変更では競合は発生しません。

競合は論理レコード レベルで解決されるため、同期中にパブリッシャ側で行われた変更が優先され、サブスクライバ テーブルの変更を置換します。

関連する行に対する変更を示す一連のテーブル

論理レコード レベルの検出、論理レコード レベルの解決

この例では、パブリケーションは次のように構成されています。

  • logical_record_level_conflict_detection は TRUE
  • logical_record_level_conflict_resolution は TRUE

パブリッシャとサブスクライバは同じデータセットから開始します。パブリッシャは customers テーブルの custcol1 列を変更します。サブスクライバは orders テーブルの ordercol1 列を変更します。同じ行または列に対する変更はありませんが、custid=1 の同じ論理レコードが変更されているため、この変更は論理レコード レベルでは競合として検出されます。

競合は論理レコード レベルでも解決されるため、同期中にパブリッシャ側で行われた変更が優先され、サブスクライバ テーブルの変更を置換します。

関連する行に対する変更を示す一連のテーブル

参照

概念

論理レコードによる関連行への変更のグループ化

ヘルプおよび情報

SQL Server 2005 の参考資料の入手