スパース列の使用
スパース列は、NULL 値用にストレージが最適化されている通常の列です。 スパース列によって、NULL 以外の値を取得するためのオーバーヘッドは増大しますが、NULL 値に必要となる領域は削減されます。 少なくとも 20 ~ 40% の領域を削減できる場合は、スパース列の使用を検討してください。 スパース列および列セットを定義するには、CREATE TABLE または ALTER TABLE ステートメントを使用します。
スパース列は、列セットおよびフィルター選択されたインデックスと併用できます。
列セット
INSERT、UPDATE、DELETE の各ステートメントは、スパース列を名前で参照できます。 ただし、テーブルのすべてのスパース列を 1 つの XML 列に結合して表示および操作することもできます。 この列を列セットと呼びます。 列セットの詳細については、「列セットの使用」を参照してください。
フィルター選択されたインデックス
スパース列は、NULL 値の行が多数あるため、フィルター選択されたインデックスに特に適しています。 スパース列でフィルター選択されたインデックスを使用すると、値が設定された行にのみインデックスを作成できます。 これにより、より小さく効率的なインデックスが作成されます。 詳細については、「フィルタ選択されたインデックスのデザイン ガイドライン」を参照してください。
スパース列とフィルター選択されたインデックスを併用することで、Windows SharePoint Services などのアプリケーションでは、SQL Server 2008 を使用して多数のユーザー定義プロパティを効率よく格納およびアクセスできます。
スパース列のプロパティ
スパース列には次の特性があります。
SQL Server データベース エンジンは、列定義で SPARSE キーワードを使用して、その列での値のストレージを最適化します。 このため、列値が NULL である行がテーブルに含まれている場合、その値はストレージを必要としません。
スパース列を含んでいるテーブルのカタログ ビューは、一般的なテーブルのものと同じです。 sys.columns カタログ ビューは、テーブル内の各列の行で構成され、列セットが定義されていればそれを含んでいます。
スパース列は、論理テーブルではなくストレージ層のプロパティです。 したがって、SELECT…INTO ステートメントを実行しても、スパース列のプロパティは新しいテーブルに上書きコピーされません。
COLUMNS_UPDATED 関数は、DML アクションで更新されたすべての列を示す varbinary 値を返します。 COLUMNS_UPDATED 関数から返されるビットは次のとおりです。
スパース列が明示的に更新された場合は、そのスパース列の対応するビットが 1 に設定され、列セットのビットが 1 に設定されます。
列セットが明示的に更新された場合は、列セットのビットが 1 に設定され、そのテーブル内のすべてのスパース列のビットが 1 に設定されます。
挿入操作では、すべてのビットが 1 に設定されます。
列セットの詳細については、「列セットの使用」を参照してください。
次のデータ型は SPARSE と指定できません。
geography |
text |
geometry |
timestamp |
image |
user-defined data types |
ntext |
領域を節約するためのデータ型別推定値
スパース列は、同一データが SPARSE とマークされていない場合に比べて、NULL 以外の値により多くのストレージ領域を必要とします。 次の表は、各データ型の使用領域を示したものです。 NULL の比率列は、正味 40% の領域を節約するために必要な NULL データの割合を示します。
固定長データ型
データ型 |
非スパース バイト数 |
スパース バイト数 |
NULL の比率 |
---|---|---|---|
bit |
0.125 |
4.125 |
98% |
tinyint |
1 |
5 |
86% |
smallint |
2 |
6 |
76% |
int |
4 |
8 |
64% |
bigint |
8 |
12 |
52% |
real |
4 |
8 |
64% |
float |
8 |
12 |
52% |
smallmoney |
4 |
8 |
64% |
money |
8 |
12 |
52% |
smalldatetime |
4 |
8 |
64% |
datetime |
8 |
12 |
52% |
uniqueidentifier |
16 |
20 |
43% |
date |
3 |
7 |
69% |
長さが有効桁数に依存するデータ型
データ型 |
非スパース バイト数 |
スパース バイト数 |
NULL の比率 |
---|---|---|---|
datetime2(0) |
6 |
10 |
57% |
datetime2(7) |
8 |
12 |
52% |
time(0) |
3 |
7 |
69% |
time(7) |
5 |
9 |
60% |
datetimetoffset(0) |
8 |
12 |
52% |
datetimetoffset (7) |
10 |
14 |
49% |
decimal/numeric(1,s) |
5 |
9 |
60% |
decimal/numeric(38,s) |
17 |
21 |
42% |
vardecimal(p,s) |
控えめな推定値として decimal 型を使用してください。 |
長さがデータに依存するデータ型
データ型 |
非スパース バイト数 |
スパース バイト数 |
NULL の比率 |
---|---|---|---|
sql_variant |
基になるデータ型で異なります。 |
||
varchar または char |
2* |
4* |
60% |
nvarchar または nchar |
2* |
4*+ |
60% |
varbinary または binary |
2* |
4* |
60% |
xml |
2* |
4* |
60% |
hierarchyid |
2* |
4* |
60% |
* 長さは、型に含まれているデータの平均に 2 バイトまたは 4 バイトを加えた長さに等しくなります。
スパース列の使用に関する制限
スパース列は、任意の SQL Server データ型にすることができ、他の列と同じように動作しますが、次の制限があります。
スパース列は、NULL 値を許容する必要があり、ROWGUIDCOL または IDENTITY プロパティを持つことができません。 スパース列のデータ型を text、ntext、image、timestamp、ユーザー定義データ型、geometry、または geography にすることはできません。また、スパース列には FILESTREAM 属性を指定できません。
スパース列には既定値を設定できません。
スパース列はルールにバインドできません。
計算列にスパース列を含めることはできますが、計算列を SPARSE とマークすることはできません。
スパース列をクラスター化インデックスまたは一意の主キー インデックスに含めることはできません。 ただし、スパース列に定義された保存される計算列と保存されない計算列は、クラスター化キーに含めることができます。
スパース列は、クラスター化インデックスまたはヒープのパーティション キーとして使用できません。 ただし、スパース列を非クラスター化インデックスのパーティション キーとして使用することはできます。
テーブル変数およびテーブル値パラメーターで使用されるユーザー定義テーブル型に、スパース列を含めることはできません。
スパース列はデータ圧縮との互換性がありません。 したがって、スパース列を圧縮テーブルに追加したり、スパース列を含むテーブルを圧縮することはできません。
スパースから非スパース、または非スパースからスパースに列を変更するには、列のストレージ形式を変更する必要があります。 SQL Server データベース エンジンでは、次の手順を使用してこの操作を実行します。
新しいストレージ サイズおよびストレージ形式でテーブルに新しい列を追加します。
テーブル内の行ごとに、古い列に格納されている値を更新して新しい列にコピーします。
古い列をテーブル スキーマから削除します。
テーブルを再構築するか、古い列に使用されていた領域を再利用します。
注意 許容されている最大行サイズを行内のデータのサイズが超える場合、手順 2. が失敗する場合があります。 このサイズには、古い列に格納されているデータのサイズと、新しい列に格納されている更新されたデータのサイズが含まれます。 この制限値は、スパース列を含まないテーブルの場合は 8,060 バイト、スパース列を含むテーブルの場合は 8,018 バイトです。 このエラーは、条件を満たすすべての列が行外にプッシュされている場合でも発生します。 詳細については、「8 KB を超える場合の行オーバーフロー データ」を参照してください。
非スパース列をスパース列に変更すると、その列で NULL 以外の値に使用される領域が増えます。 行のサイズがその上限に近い場合は、操作が失敗することがあります。
スパース列をサポートする SQL Server のテクノロジ
ここでは、次に示す SQL Server のテクノロジでスパース列がどのようにサポートされるかを説明します。
トランザクション レプリケーション
トランザクション レプリケーションでは、スパース列はサポートされますが、スパース列と併用できる列セットはサポートされません。 列セットの詳細については、「列セットの使用」を参照してください。
SPARSE 属性のレプリケーションは、sp_addarticle または SQL Server Management Studio の [アーティクルのプロパティ] ダイアログ ボックスで指定されるスキーマ オプションによって決まります。 以前のバージョンの SQL Server では、スパース列がサポートされません。 以前のバージョンにデータをレプリケートする必要がある場合は、SPARSE 属性をレプリケートしないように指定する必要があります。
テーブルがパブリッシュされる場合は、テーブルに新しいスパース列を追加したり、既存の列のスパース プロパティを変更したりできません。 このような操作が必要な場合は、パブリケーションを削除して再作成します。
マージ レプリケーション
マージ レプリケーションでは、スパース列または列セットがサポートされません。
変更の追跡
変更の追跡では、スパース列と列セットがサポートされます。 テーブルで列セットが更新されると、変更の追跡でその操作が行全体の更新として処理されます。 列セットの更新操作で更新された一連のスパース列を正確に特定するための詳細な変更追跡は行われません。 スパース列が DML ステートメントを通じて明示的に更新された場合は、その列に対する変更の追跡が通常どおりに機能し、変更された一連の列を正確に特定できます。
変更データ キャプチャ
変更データ キャプチャでは、スパース列はサポートされますが、列セットはサポートされません。
例
次の例では、ドキュメント テーブルに DocID 列と Title 列のセットが共通で含まれています。 製造グループは、すべての製造ドキュメントに ProductionSpecification 列と ProductionLocation 列を必要とします。 マーケティング グループは、マーケティング ドキュメントに MarketingSurveyGroup 列を必要とします。 この例のコードでは、スパース列を使用するテーブルを作成し、そのテーブルに 2 つの行を挿入し、そのテーブルからデータを選択します。
注意 |
---|
このテーブルは、簡単に表示して確認できるように、5 つの列のみで構成されています。 ANSI_NULL_DFLT_ON オプションが設定されている場合は、NULL 値を許容するようにスパース列を宣言しなくてもかまいません。 |
USE AdventureWorks
GO
CREATE TABLE DocumentStore
(DocID int PRIMARY KEY,
Title varchar(200) NOT NULL,
ProductionSpecification varchar(20) SPARSE NULL,
ProductionLocation smallint SPARSE NULL,
MarketingSurveyGroup varchar(20) SPARSE NULL ) ;
GO
INSERT DocumentStore(DocID, Title, ProductionSpecification, ProductionLocation)
VALUES (1, 'Tire Spec 1', 'AXZZ217', 27)
GO
INSERT DocumentStore(DocID, Title, MarketingSurveyGroup)
VALUES (2, 'Survey 2142', 'Men 25 - 35')
GO
テーブルからすべての列を選択すると、通常の結果セットが返されます。
SELECT * FROM DocumentStore ;
以下に結果セットを示します。
DocID Title ProductionSpecification ProductionLocation MarketingSurveyGroup
1 Tire Spec 1 AXZZ217 27 NULL
2 Survey 2142 NULL NULL Men 25-35
製造部門にマーケティング データは必要ないため、次のクエリに示すように、必要な列のみを返す列セットを使用します。
SELECT DocID, Title, ProductionSpecification, ProductionLocation
FROM DocumentStore
WHERE ProductionSpecification IS NOT NULL ;
以下に結果セットを示します。
DocID Title ProductionSpecification ProductionLocation
1 Tire Spec 1 AXZZ217 27
関連項目
参照
概念
変更履歴
変更内容 |
---|
データに依存する型の表に記載されているデータ サイズを修正しました。 |