多言語アプリ ツールキットの使用方法
[ この記事は、Windows ランタイム アプリを作成する Windows 8.x および Windows Phone 8.x 開発者を対象としています。Windows 10 向けの開発を行っている場合は、「最新のドキュメント」をご覧ください]
Microsoft Visual Studio には多言語アプリ ツールキットが統合されています。そのため、Windows ストア アプリや Windows Phone アプリで翻訳がサポートされ、翻訳ファイルの管理、エディター ツールの利用が可能になります。
ツールキットの利点:
- 開発時のリソースの変更や翻訳の状態を管理できます。
- 構成済みの翻訳プロバイダーに基づいて言語を選ぶための UI を提供します。
- ローカライズ業界標準 XLIFF ファイル形式をサポートしています。
- 擬似言語エンジンを使って、開発中に翻訳の問題点を見つけだすことができます。
- Microsoft Language Portal に接続して、翻訳された文字列や用語に容易にアクセスできます。
- Microsoft Translator に接続して、翻訳候補をすばやく調べることができます。
手順
ステップ 1: グローバリゼーションとローカライズのための設計。
多言語アプリ ツールキットを使うには、アプリの設計がグローバリゼーションとローカライズに対応している必要があります。アプリが Windows ストア アプリや Windows Phone アプリのグローバリゼーションとローカライズの設計モデルをサポートしていると、多言語アプリ ツールキットを使って、すばやく簡単に言語を追加できます。Windows ストア アプリのグローバル化について詳しくは、「クイック スタート: UI リソースの翻訳」をご覧ください。
ステップ 2: 多言語アプリ ツールキットのダウンロード。
多言語アプリ ツールキットに関するページから、ツールキットをダウンロードしてインストールします。
ステップ 3: 多言語アプリ ツールキットの有効化。
多言語アプリ ツールキットは、アプリをローカライズする前に、プロジェクトで使用できるようにする必要があります。
多言語アプリ ツールキットを有効にする方法:
- プロジェクト ソリューション ファイルを開きます。
- ソリューション エクスプローラーで、目的のプロジェクトを選びます。
- [ツール] メニューの [Enable Multilingual App Toolkit] (多言語アプリ ツールキットの有効化) を選びます。
多言語アプリ ツールキットの出力ウィンドウに、""Multilingual App Toolkit was successfully enabled on the selected project"" (選んだプロジェクトで多言語アプリ ツールキットが有効になりました) というメッセージが表示されると、多言語アプリ ツールキットが使用できる状態になります。
注 擬似 (qps-ploc) 翻訳が自動的にプロジェクトに追加されます。テスト中に擬似言語がどのように使用されるかについて詳しくは、次の手順「擬似言語を使ったアプリのテスト」をご覧ください。
ステップ 4: プロジェクトへの言語の追加。
プロジェクトに言語を追加する手順:
- プロジェクトを右クリックします。
- [Add translation languages] (翻訳言語の追加) を選びます。
- [Translation Languages window] (翻訳言語ウィンドウ) から、リリースする言語を選んで [OK] をクリックします。多言語アプリ ツールキットの出力ウィンドウに、選んだ言語の追加を確認するメッセージが表示されます。
- プロジェクトを右クリックし、[再構築] を選ぶと、MultilingualResources 言語フォルダーに .xlf ファイルの内容が追加されます。
Windows ストア アプリ
- 言語ファイルは、既定では MultilingualResources フォルダーに配置されています。次回の構築時に、文字列がこれらのファイルに追加されます。初回の構築後、追加の言語は最新の既知のリソースを使って設定され、次回の構築時に更新されます。
- Microsoft Language Portal サービスや Microsoft Translator サービスなどのインストール済みの翻訳プロバイダーを使って、アプリのリソースを翻訳できます。 プロバイダーが特定の言語をサポートしている場合、プロバイダーのアイコンが言語名の横に表示されます。
- プロジェクトに追加した言語は、[Translation Languages] (翻訳言語) ウィンドウのチェック ボックスをオフにしても削除できません。言語を削除するには、言語固有の .xlf ファイルを右クリックし、[削除] を選びます。
Windows Phone アプリ
- 言語ファイルは関連する resx ファイルと同じフォルダーに追加されます。文字列は、作成時、これらのファイルに最初に格納されます。 更新は構築のたびに適用されます。
- Microsoft Language Portal サービスや Microsoft Translator サービスなどのインストール済みの翻訳プロバイダーを使って、アプリのリソースを翻訳できます。 プロバイダーが特定の言語をサポートしている場合、プロバイダーのアイコンが言語名の横に表示されます。
- 後で言語を削除するには、関連する resx のフォルダー内の言語を右クリックし、[削除] を選びます。
ステップ 5: 擬似言語を使ったアプリのテスト。
擬似言語とは、実際の言語翻訳をシミュレートすることを目的としてソフトウェア製品に加えられる人為的な変更のことです。擬似言語を使うと、実際にローカライズを始める前のプロジェクト サイクルの初期段階で、ローカライズの可否に関して起きる可能性のある問題やバグを検出できます。擬似言語を使ったローカライズの可否に関するテストについて詳しくは、ローカライズの可否のテストに関するページをご覧ください。
擬似言語でローカライズした翻訳の生成方法:
- ソリューション エクスプローラーで、AppName_qps_ploc.xlf ファイルを右クリックします。
- [Generate pseudo translations] (擬似言語による翻訳の生成) を選びます。
Windows ストア アプリ
擬似言語でローカライズした Windows ストア アプリをテストする前に、Windows 8 の言語設定に擬似言語を追加する必要があります。
Windows 8 に擬似言語を追加する方法:
- コントロール パネルを開き、[時計、言語、および地域]、[言語] を順に選びます。
- [言語の追加] をクリックします。
- 検索ボックスに、「qps-ploc」と入力します。この言語コードは漏れなく入力してください。一部でも不足している場合には検索結果に擬似言語が表示されません。
- [英語 (pseudo-qps)] を選んで、[追加] をクリックします。
- 英語 (pseudo-qps) が言語の優先順位一覧の一番上にあることを確認します。
Windows Phone アプリ
Windows Phone には、優先する言語として擬似言語を設定する機能はありません。 したがって、擬似言語による翻訳の表示を有効にするには、小量のコードを追加する必要があります。
擬似言語を有効にするには、InitializeLanguage() メソッドで App.xaml.cs ファイルの try ステートメントの直後に、次のコードを追加します。
Thread.CurrentThread.CurrentCulture = new CultureInfo("qps-ploc"); Thread.CurrentThread.CurrentUICulture = new CultureInfo("qps-ploc");
注 必ず、擬似言語のテストが完了した後でこのコードをコメントアウトしてください。
これで、擬似言語を使ってローカライズしたアプリのテストを開始できます。
ステップ 6: 選んだ言語へのアプリの翻訳。
多言語アプリ ツールキットは、ビルド プロセスに組み込まれています。各ビルド時に、更新された文字列が各言語の .xlf ファイルに自動で追加されます。
擬似言語を使ってアプリをテストした後は、アプリをリリース用言語に翻訳します。その方法には 3 種類あります。
自分で翻訳する。
複数言語を使いこなせるスキルがあれば、含まれている多言語エディターを使って文字列を 1 つずつ翻訳していく方法があります。
- 翻訳する .xlf ファイルを右クリックします。
- [開く] をクリックします。これによって、外部エディターが開きます。
- 翻訳する文字列が含まれる行を選びます。
- [翻訳] 列に翻訳を入力します。
注 多言語エディターが開いていない場合は、[プログラムから開く] を選んで、開く既定のプログラムとして多言語エディターを設定します。
.xlf ファイルをサード パーティに送付して翻訳を依頼する。
.xlf ファイルの送受信。
翻訳と編集の作業をローカライズ業者に委託することもできます。多言語アプリ ツールキットからファイルをメールで送ったり、ハード ドライブ上の場所にファイルを移動したりできます。
ローカライズ業者に .xlf ファイルを送る方法:
目的の言語の .xlf ファイルを右クリックして [Send for translation] (翻訳用に送信) を選びます。
ローカル フォルダーに .xlf ファイルを送る場合には、[File folder location] (ファイル フォルダーの場所) を選びます。
または
メールで .xlf ファイルを送る場合には、[メール受信者] を選びます。
必要に応じて、[Use compressed (zipped) folder] (圧縮 (zip 形式) フォルダーの使用) を選び、選んだ .xlf ファイルを .zip ファイルに配置します。
翻訳済みの .xlf ファイルをプロジェクトにインポート。
ローカライズ業者による翻訳作業が終わり、翻訳済みの .xlf ファイルを受け取ったら、そのファイルをプロジェクトにインポートして、ローカライズしたアプリをビルドできます。
翻訳済みの .xlf ファイルをプロジェクトにインポートする方法:
- 目的の言語の .xlf ファイルを右クリックします。
- [Import translation] (翻訳のインポート) を選びます。
- インポートする .xlf ファイルまたは .zip ファイルを指定します。
注 インポート前にはインポート プロセスによって基本事項が検証されます。これは、対象となるカルチャ情報が現在の .xlf ファイルとインポートする .xlf ファイルとの間で一致することを確認するためのものです。
統合された翻訳サービスを使います。
多言語エディターに加えて Visual Studio IDE にも翻訳サービスが統合されています。これによって、リソースをローカライズするときだけではなく、製品の開発中にも翻訳サービスに容易にアクセスできます。
Visual Studio 内で翻訳サービスにアクセスするには、プロジェクト内で 1 つ以上の .xlf ファイルを右クリックし、[Generate machine translation] (機械翻訳の生成) を選びます。
多言語エディターを使用する場合も、対話形式で翻訳候補を追加する同様の翻訳サポートが提供され、リソース文字列に最適な翻訳を選ぶことができます。翻訳候補が挿入されたら、各自の翻訳スタイルに合わせて文字列を調整することができます。
多言語アプリ ツールキットには、2 種類のプロバイダーが付属しています。
- Microsoft Language Portal プロバイダーは、Microsoft の製品やサービスのユーザー インターフェイス テキストの翻訳に基づいて、翻訳のリサイクルおよび用語の検索を可能にします。
- Microsoft Translator プロバイダーは、オンデマンドの機械翻訳サービスを実現します。
多言語エディターでは、翻訳に確信が持てない箇所を後で確認できるよう、翻訳の状態を管理することができます。各文字列の状態は、[プロパティ] タブで設定できます。状態の値には、[New] (未翻訳)、[Needs review] (要確認)、[Translated] (翻訳済み)、[Final] (最終版)、[Signed off] (承認) があります。行の左にあるインジゲーターに状態が示されます。多言語エディターですべての行が緑色になれば、翻訳作業は終了となります。
ステップ 7: ストアへのアプリのアップロード。
ストアの認定プロセスを開始する前に、AppName_qps-PLOC.xlf ファイルをプロジェクトから除外する必要があります。擬似言語を使うと、ローカライズの可否に関して起きる可能性のある問題やバグを検出できますが、擬似言語は有効なストア言語ではありません。 除外しなかった場合、ストアの認定プロセスでアプリが不合格になります。