Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 の展開の計画

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1

トピックの最終更新日: 2007-08-28

Microsoft Exchange Server 2007 ユニファイド メッセージングと共に Microsoft Office Communications Server 2007 プラットフォームを使用することで、ボイス メッセージング、インスタント メッセージング (IM)、拡張プレゼンス、音声ビデオ会議、および電子メールを統合した、使いやすい一体型のコミュニケーション環境が実現します。この Microsoft 統合コミュニケーション ソリューションによる、まったく新しいコミュニケーションの方法には、次のような利点があります。

  • さまざまなアプリケーションで拡張プレゼンス通知が可能。ユーザーは、連絡先が応答可能かどうかを常に把握できます。
  • IM、ボイス メッセージング、会議、電子メール、およびその他の通信モードが統合され、ユーザーはタスクに最適なモードを選択可能。ユーザーは、必要に応じてモードを切り替えることもできます。
  • インターネットに接続できる場所ならばどこからでも利用可能な、代替通信手段が用意されている。
  • テレフォニー、IM、および会議のためのスマート クライアント (Microsoft Office Communicator 2007)。
  • 複数のデバイス間でユーザー操作性が維持される。

ここでは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 を共に展開して、ボイス メッセージング、インスタント メッセージング (IM)、拡張プレゼンス、音声ビデオ会議、および電子メールを統合したコミュニケーション環境を実現する方法について説明します。

Caution注意 :
ここで説明する機能を使用するには、ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールしたコンピュータに Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) をインストールする必要があります。

概要

Office Communications Server 2007 のトポロジはいずれも、エンタープライズ ボイスをサポートします。エンタープライズ ボイスとは IP テレフォニーの実装の 1 つで、セッション開始プロトコル (SIP) を使用して信号を送受信し、リアルタイム転送プロトコル (RTP) を使用して音声メッセージを送受信します。SIP は、IP ベース ネットワークにおける通信セッションを開始、制御、および終了するための、業界標準のアプリケーション層信号プロトコルです。SIP の正式な解説については、International Engineering Task Force (IETF) の参照仕様 RFC 3261 を参照してください。

Office Communications Server 2007 では、IM、会議、プレゼンス サブスクリプション、ビデオ、およびボイス メッセージングに SIP が使用されます。SIP を使用することで、エンタープライズ ボイス クライアントのユーザーの操作性がすべての通信モードで統一されます。エンタープライズ ボイスでは、メディアには RTP が使用されます。SIP と同様に、RTP も IETF の標準です。RTP では、IP ネットワーク経由でオーディオとビデオを伝送するためのパケット形式が定義されています。

ユーザーがエンタープライズ ボイス クライアントから公衆交換電話網 (PSTN) の宛先に電話を掛けると、この呼び出しは次のようにエンタープライズ ボイス インフラストラクチャの中を移動します。

  1. ユーザーがエンタープライズ ボイス クライアントから電話を掛けます。番号をダイヤルするか、Office Communicator または Microsoft Office Outlook で連絡先の名前をクリックします。
  2. Office Communications Server 2007 サーバーは、電話番号を E.164 形式に正規化してから、ロケーション プロファイルとユーザー ポリシーに基づくルーティング ルールを使用して、正しい仲介サーバーに呼び出しを転送します。
  3. Office Communications Server 2007 仲介サーバーは、必要なメディア変換を行い、IP ゲートウェイに呼び出しをルーティングします。
  4. IP ゲートウェイは、ローカル ダイヤル情報または構内交換機 (PBX) ダイヤル情報を適用して、呼び出しを PSTN、PBX、または IP PBX に渡します。

次の図に、ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 の単純なトポロジを示します。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 の単純なトポロジ

OCS と UM のトポロジ

Office Communications Server 2007 の概要

Office Communications Server 2007 のエンタープライズ ボイスは、ユニファイド メッセージングのインフラストラクチャを利用してボイス メール、サブスクライバ アクセス、呼び出し通知、自動応答などのサービスを提供します。次のものがあります。

  • 電話番号正規化   さまざまな形式で入力された番号文字列を単一の標準形式に変換します。正規化ルールでは、さまざまな形式でダイヤルされた電話番号を標準の E.164 形式に変換する方法が指定されています。
  • ロケーション プロファイル   ある場所に対する電話番号を電話の承認と呼び出しのルーティングのために単一の標準形式 (E.164) に変換する正規化ルールのセットに、名前を付けたものです。各ロケーション プロファイルの名前は、対応する Exchange 2007 UM ダイヤル プランの完全修飾ドメイン名 (FQDN) と一致している必要があります。
  • 電話使用法レコード   呼び出しに関する許可をすばやく簡単にユーザーに割り当てることができます。電話使用法レコードを正しく機能させるには、呼び出しを音声ユーザーに正しくルーティングするためのボイス ポリシーを割り当てる必要があります。
  • ボイス ポリシー   エンタープライズ ボイス ポリシーとは、ユーザーに割り当てられる電話使用法レコードの集合です。ほとんどの組織には、複数のボイス ポリシーがあります。組織は一般に、すべてのユーザーに適用されるグローバル ポリシーと、ユーザーごとに適用される特殊ポリシーを定めています。
  • 呼び出しルーティング   Office Communications Server 2007 の核となるルーティング コンポーネントは、次に示す着信と発信のルーティング コンポーネントです。
    • 着信ルーティング コンポーネント   エンタープライズ ボイス クライアントのユーザーによって指定されている基本設定に主に従って、着信呼び出しを処理します。ユーザーは、応答されない呼び出しを転送するか、ログに出力して通知するかを指定します。
    • 発信ルーティング コンポーネント   企業が所有して管理している電話番号、または PSTN やモバイル ネットワークの電話番号に対してエンタープライズ ボイス ユーザーが行った呼び出しを処理します。エンタープライズ ユーザーが電話を掛けると、送信ルーティング コンポーネントは、リアルタイム コミュニケーション (RTC) データベースの中で宛先の番号を検索します。ダイヤルされた番号がエンタープライズ ユーザーの SIP URI (Uniform Resource Identifier) と一致する場合は、そのユーザーのすべての SIP エンドポイントをとおって呼び出しが転送されます。
  • サービス   Office Communications Server 2007 のセットアップ ルーティングでは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングを使用してボイス メッセージングを行うための以下のサービスがインストールされます。
    • 変換サービス   ダイヤルされた番号を、管理者が定義した正規化ルールに基づいて E.164 の番号に変換するアプリケーションです。
    • エンタープライズ サービス   各着信呼び出しの宛先電話番号に対して番号の逆引き検索を実行し、その番号に対応する SIP URI を持つ宛先ユーザーを見つけて、そのユーザーの SIP エンドポイントに呼び出しを送信します。
    • ユーザー レプリケータ   Active Directory ディレクトリ サービスからユーザーの電話番号を抽出し、RTC データベースのテーブルに書き込みます。このデータベースは、エンタープライズ サービスおよびアドレス帳サービスで使用されます。
    • アドレス帳サービス   RTC データベースに書き込まれたエンタープライズ ユーザーの電話番号を E.164 形式に正規化して、Communicator 2007 でのユーザーの連絡先を利用可能な状態にします。

Office Communications Server 2007 のリファレンスとヘルプ ドキュメントをダウンロードするには、Office Communications Server およびクライアントのドキュメント ロールアップのページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージング

ユニファイド メッセージング サーバーの役割は、Exchange 2007 を実行するコンピュータにインストールして構成できる Exchange Server 2007 サーバーの役割の 1 つです。エンタープライズ ボイス ユーザーから見ると、ユニファイド メッセージング (UM) によってボイス メッセージングと電子メール メッセージングが 1 つのストアに統合され、電話からもコンピュータからもアクセスできるようになります。ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 が連携することによって、エンタープライズ ボイスが展開された環境で次に示すボイス メール、サブスクライバ アクセス、および自動応答のサービスが利用できるようになります。

  • ボイス メール   ボイス メールには、ユーザーに代わって着信呼び出しに応答する、個人用の案内応答を再生する、メッセージを録音する、ボイス メールを電子メール メッセージとしてユーザーの受信トレイに配信するなどの機能があります。呼び出しに応答しなかった場合は、その通知がユーザーの Outlook および Microsoft Outlook Web Access の受信トレイに送信されます。電子メールと同じように、呼び出しの件名と優先度を表示することができます。
  • サブスクライバ アクセス   サブスクライバとは、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングが有効になっている内部のビジネス ユーザーまたはネットワーク ユーザーです。サブスクライバ アクセスは、ユーザーが自分のメールボックスにアクセスして、電子メール、音声メッセージ、連絡先、および予定表情報を取得するために使用されます。Outlook Voice Access は、サブスクライバが自分の Exchange 2007 メールボックスにアクセスできるようにする Exchange 2007 ユニファイド メッセージングの新機能です。サブスクライバ アクセスを使用すると、エンタープライズ ボイスのユーザーがテレフォニー インターフェイスからボイス メール、予定表、および連絡先にアクセスできるようになります。サブスクライバ アクセス番号は、Exchange 2007 管理者がユニファイド メッセージング ダイヤル プランに対して構成します。Outlook ボイス アクセスの詳細については、「ユニファイド メッセージング サブスクライバ アクセスについて」を参照してください。
  • 自動応答   テレフォニー環境やユニファイド メッセージング環境では、自動応答機能または自動応答メニュー システムによって、発信者からの呼び出しが受付担当者やオペレータの介入なしに特定のユーザーまたは部署の内線番号に転送されます。多くの自動応答システムでは、受付やオペレータを呼び出すには 0 を押すか、"ゼロ" と言います。自動応答は、現代の PBX やユニファイド メッセージング ソリューションのほとんどが備えている機能です。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングでの自動応答の詳細については、「ユニファイド メッセージング自動応答について」を参照してください。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングの詳細については、「ユニファイド メッセージング」を参照してください。

Office Communications Server 2007 と Exchange 2007 ユニファイド メッセージングとを共に使用できるユーザー シナリオは 4 つあります。具体的には次のとおりです。

  • 呼び出し通知   ユーザー 1 がユーザー 2 に電話を掛けます。ユーザー 2 は応答しません。ユーザー 1 は電話を切ります。ユーザー 2 の Exchange 2007 のメールボックスに、ユーザー 1 から電話があったことを通知する電子メール メッセージが送信されます。呼び出し通知は、着信呼び出しが転送されたときにも送信されます。ユーザー 1 がユーザー 2 に電話を掛けます。ユーザー 2 は着信をユーザー 3 に転送するように設定しています。呼び出しはユーザー 3 に転送され、ユーザー 2 には、呼び出しが転送されたことを伝える通知が送信されます。
  • ボイス メール メッセージを残す   ユーザー 1 がユーザー 2 に電話を掛けます。ユーザー 2 は応答しません。ユーザー 2 は別の電話番号への呼び出し転送を構成していないので、ユーザー 1 からの呼び出しはユーザー 2 のボイス メールに転送され、ユーザー 1 はユーザー 2 への音声メッセージを残すことができます。ユーザー 2 が録音しておいたボイス メール案内応答が再生され、ユーザー 1 は案内に従ってユーザー 2 への音声メッセージを残します。ユーザー 2 は、ユーザー 1 が録音したボイス メール メッセージを受け取ります。
  • サブスクライバ アクセス   ユーザー 2 はサブスクライバ アクセス番号にダイヤルし、Exchange 2007 のメールボックスにアクセスして音声メッセージの有無を調べます。ユーザー 2 は、電子メールやボイス メール メッセージを聞いたり、予定表にアクセスしたりできます。ユーザー 1 からの音声メッセージを聞いて、ユーザー 2 は折り返し電話を掛けることにしました。オプション メニューにアクセスし、コール バック オプションを使用してユーザー 1 に電話を掛けます。
  • 自動応答   ユーザー 1 はユーザー 2 の内線番号を知りません。ユーザー 1 は、UM 自動応答に対して構成されている電話番号にダイヤルします。自動応答に対して構成されている案内応答とプロンプトがユーザー 1 に対して再生されます。ユーザー 1 は、ディレクトリ検索機能を使用してディレクトリ内でユーザー 2 を見つけて、ユーザー 2 の内線番号に電話を掛けます。
    note注 :
    Exchange 2007 ユニファイド メッセージングのサブスクライバ アクセスと自動応答サービスのどちらも、利用するにはユーザーが特定の電話番号をダイヤルする必要があります。この番号は、エンタープライズ ボイスによるルーティングが可能であることが必要です。つまり、各番号は SIP アドレスにマッピングされている必要があります。Office Communications Server 2007 は、Exchange 2007 ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされているサーバーに対して構成されているアドレスに、この SIP アドレスをルーティングすることができます。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングの Active Directory オブジェクト

Exchange ユニファイド メッセージングの Active Directory オブジェクトによって、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 エンタープライズ ボイス インフラストラクチャとの統合が可能になります。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングを正しく展開するには、以下に示す UM Active Directory オブジェクトと、対応するエンタープライズ ボイスの機能との関係を十分に理解している必要があります。

  • ユニファイド メッセージング ダイヤル プラン オブジェクト   UM ダイヤル プラン オブジェクトは、Exchange ユニファイド メッセージングでの構成の基本単位です。UM ダイヤル プランの種類には、内線電話番号、SIP URI、および E.164 があります。Exchange ユニファイド メッセージングを Office Communications Server 2007 と共に展開するときは、ダイヤル プランの種類は必ず SIP URI となります。UM ダイヤル プランのユーザーが同じプランの他のユーザーに電話を掛けるには、SIP URI または SIP アドレスを使用します。各 SIP アドレスは、その SIP URI ダイヤル プラン内で一意である必要があります。各ダイヤル プランは、エンタープライズ ボイスのロケーション プロファイルに対応している必要があります。各ロケーション プロファイルの名前は、SIP URI ダイヤル プランのフォレストの FQDN と一致している必要があります。
  • ユニファイド メッセージング IP ゲートウェイ オブジェクト   ユニファイド メッセージング IP ゲートウェイ オブジェクトは、物理的な IP ゲートウェイまたは SIP 対応 IP PBX を論理的に表したものです。UM IP ゲートウェイ オブジェクトによって、Office Communications Server 2007 プールおよびフロント エンド サーバーはそれぞれ、物理的な IP ゲートウェイであるかのように論理的に表現されます。UM IP ゲートウェイ オブジェクトはそれぞれ、対応するプールまたはサーバーに関連する構成要素をカプセル化します。作成された UM IP ゲートウェイ オブジェクトは、1 つ以上の UM ハント グループと関連付けられます。
  • ユニファイド メッセージング ハント グループ オブジェクト   UM ハント グループ オブジェクトによって、UM IP ゲートウェイと UM ダイヤル プランとを関連付けます。複数の UM ハント グループ オブジェクトを作成することで、1 つの UM IP ゲートウェイを複数の UM ダイヤル プランと、つまり複数のエンタープライズ ボイス ロケーション プロファイルと関連付けることができます。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングに組み込まれている Active Directory オブジェクトの詳細については、「ユニファイド メッセージング Active Directory オブジェクトの概要」を参照してください。

次の図に、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングのオブジェクトと Office Communications Server 2007 のオブジェクトの関係を示します。

ユニファイド メッセージングおよび Office Communications Server 2007 のオブジェクトとその関係

ユニファイド メッセージングおよび Office Communications Server

Exchange 2007 ユニファイド メッセージング (UM) によって、ボイス メッセージングと電子メール メッセージングが単一のメッセージング インフラストラクチャに統合されます。Office Communications Server 2007 エンタープライズ ボイスでユニファイド メッセージングのインフラストラクチャを利用することによって、ボイス メール、サブスクライバ アクセス、呼び出し通知、自動応答のサービスおよびその他の拡張機能 (ボイス メッセージング、インスタント メッセージング (IM)、拡張プレゼンス、音声ビデオ会議、電子メールなど) を一体化したコミュニケーション環境が実現します。これらのサービスを実装するには、ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 を共有 Active Directory トポロジ内で統合する必要があります。Exchange 2007 ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 を適切に展開して統合するために必要な構成手順の詳細については、「ユニファイド メッセージングと Office Communications Server 2007 の構成」を参照してください。

important重要 :
SIP URI ダイヤル プランに関連付けられたユーザーは、着信 FAX を受信できません。音声と FAX の着信呼び出しは仲介サーバー コンピュータをとおしてルーティングされますが、仲介サーバーを使用するときは FAX 送受信がサポートされないからです。

Office Communications Server 2007 のリファレンスとヘルプ ドキュメントをダウンロードするには、Office Communications Server およびクライアントのドキュメント ロールアップのページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

詳細情報

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。