カスタム タスクのコーディング

Task 基本クラスを継承するクラスを作成し、DtsTaskAttribute 属性をそのクラスに適用したら、基本クラスのプロパティとメソッドの実装をオーバーライドして、カスタム機能を提供する必要があります。

タスクの構成

タスクの検証

Integration Services パッケージのデザイン中に検証機能を使用して各タスクの設定を確認できるため、すべてのエラーを実行時にのみ見つけるのではなく、無効または不適切な設定が行われた場合、すぐにその問題を確認できます。検証の目的は、タスクの正常な実行を妨げる無効な設定または接続が、タスクに含まれているかどうかを判別することです。これによって、パッケージに含まれるタスクは、初回から正しく実行される可能性が高くなります。

検証機能は、カスタム コード内で Validate メソッドを使用することによって実装できます。ランタイム エンジンは、タスク上の Validate メソッドを呼び出すことにより、タスクを検証します。タスクの開発者は、タスクの検証が成功または失敗する条件を定義し、評価の結果をランタイム エンジンに通知する必要があります。

タスクの抽象基本クラス

Task 抽象基本クラスには Validate メソッドが用意されており、各タスクはこれをオーバーライドして検証条件を定義します。SSIS デザイナは、パッケージのデザイン中、Validate メソッドを自動的に複数回呼び出します。さらに、警告またはエラーが発生した場合はユーザーに画面上で通知し、タスクの構成に関する問題を識別できるようにします。タスクは、DTSExecResult 列挙から値を返し、警告およびエラー イベントを発生させることにより、検証結果を返します。これらのイベントには、SSIS デザイナでユーザーに表示される情報が含まれています。

次に、いくつかの検証の例を挙げます。

  • 接続マネージャは、特定のファイル名を検証します。

  • 接続マネージャは、入力の種類が XML ファイルなどの必要な種類であることを検証します。

  • データベースの入力が必要なタスクは、データベース以外の接続からデータを受け取れないことを確認します。

  • タスクは、タスクのどのプロパティも、同じタスクに設定された他のプロパティと矛盾していないことを保証します。

  • タスクは、タスクが使用する必要なすべてのリソースが実行時に使用できることを保証します。

検証する項目としない項目を決定する際には、パフォーマンスを考慮する必要があります。たとえば、タスクへの入力で、低帯域またはトラフィックが混雑しているネットワーク経由の接続が使用されている場合があります。その場合、リソースが使用可能かを検証する処理には、数秒かかる可能性があります。別の検証では要求処理量が多いサーバーへのラウンド トリップが発生し、検証ルーチンの速度が遅くなる可能性があります。検証可能なプロパティや設定は多数ありますが、すべてを検証するべきではありません。

  • Validate メソッド内のコードは、タスクの実行前に TaskHost によっても呼び出され、検証が失敗した場合は TaskHost の実行がキャンセルされます。

検証時のユーザー インターフェイスについての検討事項

Task には、Validate メソッドのパラメータとして、IDTSComponentEvents インターフェイスが含まれています。IDTSComponentEvents インターフェイスには、イベントをランタイム エンジンに送るためにタスクが呼び出すメソッドが含まれています。検証中に警告またはエラー条件が発生すると、FireWarning および FireError メソッドが呼び出されます。どちらの警告メソッドにも、エラー コード、ソース コンポーネント、説明、ヘルプ ファイル、ヘルプ コンテキスト情報などの同じパラメータが必要です。SSIS デザイナはこの情報に基づいて、エラーの発生をデザイン画面上で視覚的に通知します。デザイナによって提供される視覚的な通知には、デザイン画面上のタスクの横に表示される感嘆符のアイコンがあります。この視覚的通知は、実行を続けるにはタスクの構成を追加する必要があることを示します。

感嘆符のアイコンによって、エラー メッセージを含むツールヒントも表示されます。エラー メッセージは、タスクによってイベントの説明パラメータに提供されます。エラー メッセージは、Business Intelligence Development Studio の [タスク一覧] ペインにも表示されます。このペインは、すべての検証エラーを表示するための集中管理場所となります。

検証例

次のコード例は、UserName プロパティを使用したタスクを示しています。このプロパティは、検証に必要なものとして指定されています。このプロパティが設定されていない場合、タスクはエラーを通知し、DTSExecResult 列挙から Failure を返します。例外が発生すると、Validate メソッドは try/catch ブロックにラップされ、検証は失敗します。

using System;
using Microsoft.SqlServer.Dts.Runtime;

public class SampleTask : Task
{
  private string userName = "";

  public override DTSExecResult Validate(Connections connections,
     VariableDispenser variableDispenser, IDTSComponentEvents events,
     IDTSLogging log)
  {
    try
    {
      if (this.userName == "")
      {
        //   Raise an OnError event.
        events.FireError(0, "SampleTask", "The UserName property must be configured.", "", 0);
        //   Fail validation.
        return DTSExecResult.Failure;
      }
      //   Return success.
      return DTSExecResult.Success;
    }
    catch (System.Exception exception)
    {
      //   Capture exceptions, post an error, and fail validation.
      events.FireError(0, "Sampletask", exception.Message, "", 0);
      return DTSExecResult.Failure;
    }
  }
  public string UserName
  {
    get
    {
      return this.userName;
    }
    set
    {
      this.userName = value;
    }
  }
}
Imports System
Imports Microsoft.SqlServer.Dts.Runtime

Public Class SampleTask
  Inherits Task

  Private _userName As String = ""

  Public Overrides Function Validate(ByVal connections As Connections, _
     ByVal variableDispenser As VariableDispenser, _
     ByVal events As IDTSComponentEvents, _
     ByVal log As IDTSLogging) As DTSExecResult

    Try
      If Me._userName = "" Then
        '   Raise an OnError event.
        events.FireError(0, "SampleTask", "The UserName property must be configured.", "", 0)
        '   Fail validation.
        Return DTSExecResult.Failure
      End If
      '   Return success.
      Return DTSExecResult.Success
    Catch exception As System.Exception
      '   Capture exceptions, post an error, and fail validation.
      events.FireError(0, "Sampletask", exception.Message, "", 0)
      Return DTSExecResult.Failure
    End Try

  End Function

  Public Property UserName() As String
    Get
      Return Me._userName
    End Get
    Set(ByVal Value As String)
      Me._userName = Value
    End Set
  End Property

End Class

タスクの保存

通常、タスクに対して、カスタムの永続性を実装する必要はありません。カスタムの永続性は、オブジェクトのプロパティで複合データ型が使用されている場合にのみ必要です。詳細については、「Integration Services 用のカスタム オブジェクトの開発」を参照してください。

タスクの実行

このセクションでは、タスクによって継承およびオーバーライドされる Execute メソッドの使用方法について説明します。また、タスクの実行結果についての情報を提供するさまざまな方法についても説明します。

Execute メソッド

パッケージに含まれるタスクは、Integration Services のランタイムが Execute メソッドを呼び出すと実行されます。タスクは、中心となるビジネス ロジックや機能をこのメソッドに実装し、メッセージを送信したり、DTSExecResult 列挙から値を返したり、ExecutionValue プロパティの get プロパティをオーバーライドしたりする方法で、実行結果を返します。

基本クラス Task には、既定で Execute メソッドが実装されています。カスタム タスクは、実行時の機能を定義するために、このメソッドをオーバーライドします。TaskHost オブジェクトはタスクをラップし、ランタイム エンジンやパッケージ内の他のオブジェクトと分離します。そのため、タスクはパッケージ内での実行順序に関する位置を認識しているわけではなく、ランタイムによって呼び出されたときにのみ実行されます。このアーキテクチャにより、実行中にタスクがパッケージを変更したときに発生する問題が回避されます。タスクがパッケージ内の他のオブジェクトにアクセスするには、Execute メソッド内のパラメータとして用意されているオブジェクトを使用する必要があります。これらのパラメータを使用すると、パッケージの安定度と信頼性を保証するために必要な分離性を保ちながら、イベントの発生、イベント ログへのエントリの記録、変数コレクションへのアクセス、およびトランザクション内のデータ ソースへの接続の登録を、タスクに実行させることができます。

次の表は、Execute メソッド内のタスクに対して提供されるパラメータの一覧です。

パラメータ

説明

Connections

タスクで使用できる ConnectionManager オブジェクトのコレクションを含みます。

VariableDispenser

タスクで使用できる変数を含みます。タスクは、VariableDispenser を介して変数を使用します。変数を直接使用することはありません。変数ディスペンサには、変数をロックまたはロック解除したり、デッドロックや上書きを防ぐ機能があります。

IDTSComponentEvents

イベントを生成してランタイム エンジンに送るためにタスクが呼び出すメソッドを含みます。

IDTSLogging

イベント ログにエントリを記録するためにタスクが使用するメソッドおよびプロパティを含みます。

Object

トランザクション オブジェクトの一部がコンテナである場合、そのオブジェクトを含みます。この値はパラメータとして、ConnectionManager オブジェクトの AcquireConnection メソッドに渡されます。

実行結果のフィードバックの送信

タスクは、タスクのコードを try/catch ブロックにラップし、ランタイム エンジンに例外が発生するのを防ぎます。これにより、パッケージは予期せず停止することなく、実行を完了します。ランタイム エンジンには、タスクの実行中に発生する可能性のあるエラー条件を処理するメカニズムが他にも用意されています。このメカニズムには、エラー メッセージや警告メッセージの通知、DTSExecResult 構造からの戻り値、メッセージの通知、DTSExecResult の戻り値、ExecutionValue プロパティによるタスクの実行結果に関する情報の公開などが含まれています。

IDTSComponentEvents インターフェイスには、FireWarning メソッドおよび FireError メソッドがあり、タスクはこれらを呼び出して、エラー メッセージや警告メッセージをランタイム エンジンに通知できます。どちらのメソッドにも、エラー コード、ソース コンポーネント、説明、ヘルプ ファイル、ヘルプ コンテキスト情報などのパラメータが必要です。タスクの構成に応じて、ランタイムは、イベントやブレークポイントを発生させたり、イベント ログに情報を記録したりする方法で、これらのメッセージに応答します。

TaskHost は、実行結果に関する追加情報を提供するために使用可能な ExecutionValue プロパティも提供します。たとえば、タスクがその Execute メソッドの一部としてテーブルから行を削除すると、削除された行数は ExecutionValue プロパティの値として返されます。また、TaskHostExecValueVariable プロパティを提供します。ユーザーはこのプロパティを使用して、タスクから返された ExecutionValue を、タスクで認識可能な任意の変数にマップすることができます。指定した変数を使用して、タスク間の優先順位制約を確立できます。

実行例

次のコード例では、Execute メソッドを実装する方法、およびオーバーライドされた ExecutionValue プロパティを示します。このタスクでは、タスクの fileName プロパティで指定されたファイルが削除されます。ファイルが存在しない場合、または fileName プロパティが空の文字列である場合、タスクは警告メッセージを通知します。タスクは、ExecutionValue プロパティで、ファイルが削除されたかどうかを示す Boolean 値を返します。

using System;
using Microsoft.SqlServer.Dts.Runtime;

public class SampleTask : Task
{
  private string fileName = "";
  private bool fileDeleted = false;

  public override DTSExecResult Execute(Connections cons,
     VariableDispenser vars, IDTSComponentEvents events,
     IDTSLogging log, Object txn)
  {
    try
    {
      if (this.fileName == "")
      {
        events.FireWarning(0, "SampleTask", "No file specified.", "", 0);
        this.fileDeleted = false;
      }
      else
      {
        if (System.IO.File.Exists(this.fileName))
        {
          System.IO.File.Delete(this.fileName);
          this.fileDeleted = true;
        }
        else
          this.fileDeleted = false;
      }
      return DTSExecResult.Success;
    }
    catch (System.Exception exception)
    {
      //   Capture the exception and post an error.
      events.FireError(0, "Sampletask", exception.Message, "", 0);
      return DTSExecResult.Failure;
    }
  }
  public string FileName
  {
    get { return this.fileName; }
    set { this.fileName = value; }
  }
  public override object ExecutionValue
  {
    get { return this.fileDeleted; }
  }
}
Imports System
Imports Microsoft.SqlServer.Dts.Runtime

Public Class SampleTask
  Inherits Task

  Private _fileName As String = ""
  Private _fileDeleted As Boolean = False

  Public Overrides Function Execute(ByVal cons As Connections, _
     ByVal vars As VariableDispenser, ByVal events As IDTSComponentEvents, _
     ByVal log As IDTSLogging, ByVal txn As Object) As DTSExecResult

    Try
      If Me._fileName = "" Then
        events.FireWarning(0, "SampleTask", "No file specified.", "", 0)
        Me._fileDeleted = False
      Else
        If System.IO.File.Exists(Me._fileName) Then
          System.IO.File.Delete(Me._fileName)
          Me._fileDeleted = True
        Else
          Me._fileDeleted = False
        End If
      End If
      Return DTSExecResult.Success
    Catch exception As System.Exception
      '   Capture the exception and post an error.
      events.FireError(0, "Sampletask", exception.Message, "", 0)
      Return DTSExecResult.Failure
    End Try

  End Function

  Public Property FileName() As String
    Get
      Return Me._fileName
    End Get
    Set(ByVal Value As String)
      Me._fileName = Value
    End Set
  End Property

  Public Overrides ReadOnly Property ExecutionValue() As Object
    Get
      Return Me._fileDeleted
    End Get
  End Property

End Class
Integration Services のアイコン (小) 最新の Integration Services の入手

マイクロソフトが提供する最新のダウンロード、アーティクル、サンプル、ビデオ、およびコミュニティで選択されたソリューションについては、MSDN または TechNet の Integration Services のページを参照してください。

これらの更新が自動で通知されるようにするには、ページの RSS フィードを購読します。