Visual Basic アプリケーションモデルの拡張

[アーティクル]
09/17/2008

更新 : 2007 年 11 月

WindowsFormsApplicationBase クラスの Overridable メンバをオーバーライドすることによって、アプリケーションモデルに対して機能を追加できます。このテクニックを使用すると、アプリケーションモデルの動作をカスタマイズしたり、アプリケーションの起動時および終了時に独自のメソッドの呼び出しを追加したりできます。

アプリケーションモデルの視覚的な概要

このセクションでは、Visual Basic アプリケーションモデルにおける関数呼び出しのシーケンスを視覚的に示します。各関数の目的については、この後のセクションで詳しく説明します。

次の図は、一般的な Visual Basic Windows フォームアプリケーションにおけるアプリケーションモデルの呼び出しシーケンスを示しています。シーケンスは Sub Main プロシージャによる Run メソッドの呼び出しで始まります。

Visual Basic アプリケーションモデル -- 実行

Visual Basic アプリケーションモデルでは、StartupNextInstance イベントと UnhandledException イベントも使用できます。次の図は、これらのイベントが発生するしくみを示しています。

Visual Basic アプリケーションモデル -- 次のインスタンス Visual Basic アプリケーションモデルハンドルされていない例外

基本メソッドのオーバーライド

Application のメソッドが実行される順序は、My.Application.Run メソッドにより定義されます。既定では、Windows フォームアプリケーションの Sub Main プロシージャから Run メソッドが呼び出されます。

アプリケーションが通常のアプリケーション (複数インスタンスアプリケーション) の場合、または単一インスタンスアプリケーションの最初のインスタンスの場合には、Run メソッドは一連の Overridable メソッドを次の順序で実行します。

OnInitialize。既定では、このメソッドは、visual スタイル、テキスト表示スタイル、およびメインアプリケーションスレッドの現在のプリンシパル (Windows 認証を使用するアプリケーションの場合) を設定し、コマンドライン引数に /nosplash と -nosplash のいずれも指定されていない場合には ShowSplashScreen を呼び出します。

この関数が False を返した場合、アプリケーションの起動処理はキャンセルされます。これは、状況に応じてアプリケーションの実行が不要な場合に役立ちます。

OnInitialize メソッドは以下のメソッドを呼び出します。
1. ShowSplashScreen。アプリケーションにスプラッシュスクリーンが定義されているかどうかを判断し、定義されている場合はそのスプラッシュスクリーンを別スレッドで表示します。
  
  ShowSplashScreen メソッドには、MinimumSplashScreenDisplayTime プロパティで指定されたミリ秒以上スプラッシュスクリーンを表示するコードが含まれています。この機能を使用するためには、プロジェクトデザイナを使用してアプリケーションにスプラッシュスクリーンを追加するか (この場合は My.Application.MinimumSplashScreenDisplayTime プロパティは 2 秒に設定されます)、または OnInitialize メソッドか OnCreateSplashScreen メソッドをオーバーライドするメソッドで My.Application.MinimumSplashScreenDisplayTime プロパティを設定する必要があります。詳細については、「My.Application.MinimumSplashScreenDisplayTime プロパティ」を参照してください。
2. OnCreateSplashScreen。スプラッシュスクリーンを初期化するコードをデザイナが追加できます。
  
  既定では、このメソッドは何も実行しません。Visual Basicプロジェクトデザイナでアプリケーションのスプラッシュスクリーンを選択した場合、デザイナは、SplashScreen プロパティをスプラッシュスクリーンフォームの新しいインスタンスに設定するメソッドで OnCreateSplashScreen メソッドをオーバーライドします。
OnStartup。Startup イベントの発生を機能拡張するための部分です。この関数が False を返した場合、アプリケーションの起動処理は中断されます。

既定では、このメソッドは Startup イベントを発生させます。イベントハンドラが、イベント引数の Cancel プロパティを True に設定した場合、このメソッドは False を返し、アプリケーションの起動処理はキャンセルされます。
OnRun。初期化処理の完了後、メインアプリケーションを実行する準備ができたときのための開始点です。

既定では、このメソッドは、Windows フォームのメッセージループに入る前に、OnCreateMainForm メソッド (アプリケーションのメインフォームを作成するため) および HideSplashScreen メソッド (スプラッシュスクリーンを閉じるため) を呼び出します。
1. OnCreateMainForm。メインフォームを初期化するコードをデザイナが追加するための手段を提供します。
  
  既定では、このメソッドは何も実行しません。しかし、Visual Basicプロジェクトデザイナでアプリケーションのメインフォームを選択した場合、デザイナは、MainForm プロパティをメインフォームの新しいインスタンスに設定するメソッドで OnCreateMainForm メソッドをオーバーライドします。
2. HideSplashScreen。スプラッシュスクリーンが定義されているアプリケーションで、スプラッシュスクリーンが開かれている場合には、このメソッドがそれを閉じます。
  
  既定では、このメソッドはスプラッシュスクリーンを閉じます。
OnStartupNextInstance。単一インスタンスアプリケーションのインスタンスが二重起動されたときの動作をカスタマイズする手段を提供します。

既定では、このメソッドは StartupNextInstance イベントを発生させます。
OnShutdown。Shutdown イベントの発生を機能拡張するための部分です。このメソッドは、メインアプリケーションで未処理の例外が発生した場合には実行されません。

既定では、このメソッドは Shutdown イベントを発生させます。
OnUnhandledException。上記のいずれかのメソッドで未処理の例外が発生したときに実行されます。

既定では、デバッガがアタッチされておらず、かつアプリケーションが UnhandledException イベントを処理している場合に、このメソッドは UnhandledException イベントを発生させます。

単一インスタンスアプリケーションの場合で、同じアプリケーションが既に実行中のときには、二重起動された方のインスタンスは、同じアプリケーションの元のインスタンスの OnStartupNextInstance メソッドを呼び出し、自らは終了します。

WindowsFormsApplicationBase コンストラクタは UseCompatibleTextRendering プロパティを呼び出して、アプリケーションのフォームにどのテキスト描画エンジンを使用するかを判断します。既定では、UseCompatibleTextRendering プロパティは False を返します。これは Visual Basic 2005 の既定である GDI テキスト描画エンジンが使用されることを示します。UseCompatibleTextRendering プロパティは、True を返すようにオーバーライドできます。この値は、Visual Basic .NET 2002 および Visual Basic .NET 2003 の既定である GDI+ のテキスト描画エンジンが使用されることを示します。

アプリケーションの構成

Visual Basic アプリケーションモデルの一環として、WindowsFormsApplicationBase クラスには、アプリケーションを構成するプロテクトプロパティが用意されています。これらのプロパティは、実装するクラスのコンストラクタで設定する必要があります。

既定の Windows フォームプロジェクトでは、プロジェクトデザイナは、デザイナの設定でこれらのプロパティを設定するコードを作成します。これらのプロパティが使用されるのはアプリケーションの起動時のみです。アプリケーションが起動された後で値を設定しても効果はありません。

プロパティ	意味	プロジェクトデザイナでの設定
IsSingleInstance	アプリケーションが単一インスタンスアプリケーションまたは複数インスタンスアプリケーションとして動作するかどうかを表します。	方法 : アプリケーションのインスタンス化の動作を指定する (Visual Basic)
EnableVisualStyles	アプリケーションが XP visual スタイルを使用するかどうかを表します。	方法 : Visual スタイルを有効にする (Visual Basic)
SaveMySettingsOnExit	アプリケーションの終了時に、ユーザー設定の変更をアプリケーションが自動的に保存するかどうかを表します。	プロジェクトデザイナのアプリケーションペインの [シャットダウン時に My.Settings を保存する] チェックボックスをオンにします。
ShutdownStyle	メインフォームが閉じたときや、すべてのフォームが閉じたときなど、どのようなときにアプリケーションを終了させるかを表します。	方法 : アプリケーションのシャットダウン動作を指定する (Visual Basic)